前巻感想はこちら↓
https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/04/15/235931
さて、最近では六月に体育祭が繰り広げられているのも当たり前になってきていると聞いた事があるが、本当であろうか。少なくとも私は九月など秋口に開催されていた世代であるので。
そんな訳で陰キャラには面倒極まりないイベント、体育祭である。全員巻き込まれなくてはいけない体育祭が繰り広げられるのが今巻である。
だがしかし、確かに体育祭は主の柱の一つであるが、本当の意味での本題はもう一つ、迫られ続ける一雪の変化する心境、そして始まる二菜との淡いラブコメである。
相も変わらず、最後にはお約束が如く響く「なんでですかー!!」の叫び。
だけど、そこに至るまでが違う。今まで塩対応一辺倒だった一雪が塩対応の前に一呼吸はさみ、歩み寄る姿勢を見せ始めるのである。
一緒にどこかに出かけるかと二菜を誘い、二人で手を繋いで映画館に行ったり二菜が自ら着せ替え人形になったり。
求められるまま、思わず二菜の頭をなででしまったり。
更には、お前なら安心だからと自宅の合鍵を誕生日プレゼントのおまけとして渡したり。
それは確かな心境の変化。徐々に絆されつつある彼の、いつの間にか二菜が隣にいる事が当たり前になりつつあるという受容なのだ。
それは、体育祭で二菜の応援があったからこそ頑張れたという事からも明白なのである。
「・・・・・・俺にも、多少の自覚はある」
自分でもわかっている、警戒感が薄れてきている事。だけどそれでも、彼女と一緒にいる時間が心地よくて。
それこそが今までいくら塩対応をされてもめげなかった二菜が、確かに掴み取った戦果であり成果なのである。
通い妻のように入り浸られ。食後のお茶を一緒にするまでの仲まで発展し。だけど最後の一歩を踏み越えていない、だからこそまだ二人は付き合っていない。
・・・いや本当、何故付き合っていないのか? そうツッコミたくなっても当たり前の筈である、寧ろおかしくない。
そんな二人を見守る、周りの人達の視線も徐々に増えていく。
隣の席の名もなき男子が羨んだり。勘違いイケメン君が二菜を狙ってアプローチをかけてきたり。
更に甘さを重ね熟成させながら、人間関係の広がりを描いていき世界を広げる。そんな更にドタバタ感と甘々感、面白さ深まる今巻。
前巻を楽しまれた読者様は是非。前巻を読んでいない読者様は今からでも。きっと満足できるはずである。