前巻感想はこちら↓
さて、いきなりだが体育祭である。前回、ちょっとした大冒険を繰り広げたカイとリン達の次の舞台、それは学園内の大きなイベントの一つである体育祭である。では、勇者学園の体育祭とは一体どんなものなのか?
三人一組で挑む体育祭。しかしそれは本当に勇者学園なのかとツッコミたくなるような耳を疑うような、ギャグに満ちた競技の数々だったのである。
何故に競技の内容が就職面接なのか。それは確かに大切ではあるけれども。
何故、競技の内容が夫婦喧嘩なのか。確かに将来経験するかもしれないが。
そんな人生の障害物競走や、パンを守り抜くパン食い競争、水上騎馬戦といった普通の競技とは何癖も違う競技の数々。
競技を繰り広げる中、騒動が多めに混じった笑いだらけの競技を駆け抜ける中、明らかとなるのはライバルの勇者、クロトの秘密である。
優秀である事に拘る、勇者課程の優等生。しかし、その姿はどこか痛々しく、まるで無理して振る舞おうとしているかのように、どこか歪なものを感じさせる。
それは何故か。その理由こそがクロトの秘密。亡くしたものを必死に抱え、目指したものを目指すと決めた、一人の勇者の卵の茨の道。
その痛ましさへと、再び否を突き付けるのが我らがヒロインであるリンである。
魔物に話は通じない、だからこそ魔物は倒すべき敵。そして魔物を葬り去る事こそ勇者の使命。愚直なまでに正義を信じ、襲い来る魔物を殲滅しようともがくクロト。
「助けるよ」
しかし、そこで否を突き付け魔物にも心が、声があるのだという事をリンは知らせ。暴走する魔物を止める為に、何も持たぬその手で立ち向かう。
だからこそ彼女は偉い。そして、そんな彼女だからこそ誰かが助けようと思い、その周りへと集ってくるのだ。
前巻から更にコメディへと舵を切り、前巻にも増して繰り広げられる七転八倒、抱腹絶倒の大騒動。だけど、そんな中でも頑張るカイとリンの活躍が更に眩しく熱いのである。
前巻も併せて、どうか画面の前の読者の皆様も読んでみてほしい。古き物語の中にもある面白さを再び実感できるはずである。