・・・え、いきなり割と過去の単巻の作品が出てきたなって? 偶には良いじゃないですか、昔を振り返るのも。さて、画面の前の読者の皆様に一つお聞きしたいのだが今配偶者がおられる読者様はおられるだろうか。配偶者がおられる読者様は、何処で出会われたのだろうか。
夏休み、それは物語においては何かが始まる、一つの始まりの時期。そんな始まりの時期に、主人公である誠二が出会ったのは、自らをお嫁さんと名乗る謎の少女、みのり(表紙)である。
しかし、タイトルでは十歳となっているが、彼女は十歳ではない。誠二と同年齢である。では何故、十歳相当に精神と身体が巻き戻ってしまっているのか?
それは、神様の残酷で少し優しい悪戯のせいである。
突然現れた少女、みのりに押し切られ始まる、この事態を解決するまでという約束の中での新婚生活。二人で台所に立って料理を作ったり、共にショッピングモールへ買い物に出かけたり。おままごとのようでありながらも確かにそこにあるのは、一つの新婚生活。
その中で明らかとなるのは、誠二の家族事情。そしてみのりの家庭事情と、彼女の行動の本当の理由。
誠二に本当の意味での家族はなく、みのりもまた、家族の愛情は希薄な中で育てられ。家族にも友達にも頼れない中、誠二ならきっと分かってくれると信じられたから。
何故、信じられたのか。それは彼女が彼の事を好いているから。
本が好きに見えたのも、近づきたいという想いからだった。話しかけてほしいという行動だった。
「倉敷くんと出逢って、倉敷くんを好きになった」
今まで一歩外れた位置から見ていた。だけど、彼女と関わる中で分かった人と関わる事の大切さ。
だからこそ、誠二は約束の時が来たとき、時を操るカミサマへと彼女の幸せを願うが故の答えを出せたのだ。
お互いの時間を分け合って、君の時間を生きてほしいから時間を返そうとして。
「倉敷くんが、私と一緒にいてくれるなら、同じだから。私の時間を倉敷くんの為に使うから、倉敷くんの時間を私のために使ってほしい。ね?」
だけど彼女はそれは嫌だと、願い下げだと口にする。失いたくない、だからこそ共に生きてほしいと彼に願う。
そう、この作品は確かに新婚生活のお話であり、幸せになるべき二人が神様のいたずらで出会い、少しずつ愛を深めて惹かれ合い、一蓮托生となって一緒に歩きだすまでを描いたちょっとビターで、だけどほんのり温かくて甘い恋のお話である。
一冊でスッキリと読めるラブコメをご所望の読者様は是非。きっと満足できるはずである。