読書感想:Tier1姉妹 有名四姉妹は僕なしでは生きられない

 

 さて、Tierという言葉を聞いてまずは画面の前の読者の皆様は何を連想されるであろうか。私としては、TCGを連想してしまうのだが。TCGにおけるTierというのは簡単に言うと大会等で使われるデッキの頒布を示している事が多く、この数字が小さい程、多くのプレイヤーに使われていると言う事なのだが。それはともかく、この作品にはTCGは全然関係ない。重要なのはTierという言葉である。この作品では学校でのTier、そのトップの四姉妹とのラブコメなのだ。

 

 

全国模試一桁常連、私立の高校という環境下でも周りからは異質と思われている少年、織見。しかしとある事情でバイトに励んでいるのがバレてしまい。理事長から退学を回避するために、自分の家で家事代行のバイトをしてほしいとお願いされる。

 

そこにいたのは、有名な四姉妹。長女のイラストレーター兼Vtuberな引きこもり、菊莉(表紙右上)。次女である級友の人気配信者、蘭香(表紙中央)。FPSのプロゲーミングチーム所属の三女、梅瑠(表紙右)。四女で人気声優の竹奈々(表紙左)。

 

「君たちの欠陥を補うのが僕の仕事だ」

 

「あの人も、わたしたちと同じだったんだ・・・・・・」

 

菊莉だけは知っていたものの情報共有をしていなかったので到着早々、蘭香のパンツを見ると言うラッキースケベを起こし嫌われてしまい。しかし彼女の偏見を裏切り家事万能、更には確定申告までこなすという有能ぶり。ツンツンしてばかりだった蘭香も、織見が実は児童養護施設出身であり、中小企業の社長の家に引き取られるも会社の倒産により貧乏暮らし、という事情を聴いて心を開き。本格的に家事代行としての仕事が始まる。

 

『今度も、私を選んでくれるよね?』

 

しかし、そこに唐突な謎の気配。何者かから送られてきたメール、そこに添付されていた写真は、幼き日の織見、竹奈々、蘭香、梅瑠を写したと思しきもの。そして謎のメッセージ。だがその頃の記憶はない。一先ず、竹奈々の役作りに協力したり、梅瑠の勉強の面倒を見たり、蘭香に料理の手ほどきをしたり。

 

「どうしても思い出せないんなら・・・・・・思い出さないほうがいいんじゃないかな?」

 

何故写真に菊莉だけいなかった? その謎を探る時、判明するのは菊莉は、不登校である筈なのに実は自分のすぐ近くにいた、という事。 理事長より聞き出したのは、実は理事長の養子であり、全員違う家で生まれた4姉妹と織見は一カ月だけ同じ施設で家族のように過ごした間柄であり。 そこで子供達の中だけで完結する何かが、一時の記憶を奪っていたという事。 どうも自分は誰かを選んでいたらしい。その誰か、までは思い出せずとも。 菊莉だけは、覚えている。

 

「わからない」

 

「どんな憂鬱な思い出も、語り合える相手がいたら酒の肴くらいにはなる」

 

その事実を示すのは、イラストレーターとしてのペンネーム。聞き出したのはあの日の真実。織見を中心に恋の嵐が起きて、誰か一人を選ぶもそれは隠し通され、それが結果としてギスギス、不和を招いてしまったという事。その相手は菊莉、ではないらしい。あの日の想いをぶつけてもらって、受け止めて。 まずは友人に戻った彼女が、問題の写真を見て導き出した推論。それは今、写真を持っているのは彼女、という事。

 

謎解きめいた展開の中、再び動き出す恋があって。正に多角的で奥の深い甘さがあるこの作品、正に悦い。真っ直ぐに面白いのだ。

 

真っ直ぐに突き刺さってくるラブコメが見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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