読書感想:双子まとめて『カノジョ』にしない?

 

 さて、最近の双子がヒロインの作品と言えば個人的には「ふたきれ」こと、「恋は双子で割り切れない」であると思うが、かの作品はきちんと双子の片割れを選んで恋人になっている訳である。それもまぁ当たり前、仕方のない事かもしれない。双子を纏めて選んでしまってはハーレム系ラブコメ。現実的な恋愛観に即するならば、何方かを選ぶのが常であるのだから。

 

 

しかしこの作品は、双子を纏めて彼女にする、いわばハーレム系に分類されるかもしれぬラブコメであり、ハートフルな作品である、それは一体、どういうことなのか。ここから書いていきたい。

 

「・・・・・・どうして、本気を出さなかったんですか?」

 

幼稚園から高校まで一貫の私立有栖山学院。その高等部の中間テストで一位を叩きだした外部性、宇佐見。しかし彼女は、八位にランクインしていた外部性である主人公、咲人に詰め寄っていた。中学生時代同じ塾であり、彼の実力は知っている。だからこそそれが不可解。一先ずその場をしのぐことに成功する中、咲人は宇佐見がゲーセンに出入りしているのを目撃し。格ゲーで彼女に勝利したことで仲良くなって。気が付けば学校で彼女を助けたり、ゲーセンでも交流したり。共に過ごす時間が増えていっていた。

 

「えっ、告白したの私だよ!?」

 

「でも・・・・・・いま告白されたのは、うちだし」

 

 

ならば思いが醸成されるのは当然であったのだろう。告白に行くのも必然であったのだろう。しかし、そこで衝撃の事実が判明する。学校で関わっていたのは妹の千影(表紙左)、ゲーセンで関わっていたのは姉の光莉(表紙右)。彼女達は双子の姉妹であったのだ。

 

「双子まとめてカノジョにしない?」

 

そして咲人は同時に二人に惹かれていた。それは不誠実であるからこそ、付き合わないと言う答えを選ぼうとした。だが、光莉の提案に千影が混乱しながらも乗ってしまった事で。結果的にお試しで、秘密という条件を付けて三人でお付き合いする事となる。

 

ある時は、千影が光莉に秘密で指示を受けながら遊園地デートしたり。またある時は三人でお家デートして、何故か双子姉妹がバニーガール服になってみたり。

 

時に賑やか、時にドタバタ。そんな日々の中、千影のひたむきさが。光莉の明るさが。とある事情で傷ついて目立つことを避けていた、咲人の心の傷を埋めていく。彼にとって必要なものとなっていく。

 

「だから、誰か一人でも欠けちゃダメなんだ」

 

そう、一人も欠けてはいけないのだ。三連星な彼等は、一人も欠けてはならぬ。三人だから、それこそが彼らだけの特別だから。だからこそ、仕事を押し付けられ困っている千影の元へ。とある因縁を持つかつての同級生たちの元へ、光莉を伴い咲人は立ち向かっていく。

 

「「愛してくれる?」」

 

それは確かに、一歩成長した証。支え合うものとして歩み出した証なのだ。

 

羨ましくもこそばゆく甘く、そしてハートフルな恋愛模様が繰り広げられるこの作品。ハートフルなラブコメが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。