読書感想:最果ての聖女のクロニクル

 

 さて、この日本の最果てとは、例えばどこになるのだろうか。住んでいる所にもよるが、領土的に言えば日本の最北端、もしくは最南端までいけば最果てと言う扱いになるのだろうか。 画面の前の読者の皆様は最果て、の景色を見られた事はあるであろうか。 見られたと言う読者様は、何か特別な景色であったのだろうか。

 

 

その答えは私は分からぬので、行った事のあるという方にお任せするとして。この作品は最果て、を見に行き。その果てに更に最果てを目指していくお話なのだ。

 

 

地上で魔法戦争が激化していた二千年前、救世主として現れた女神メフィリムが聖剣で大地を斬って、空に浮かべた天空王国フォルトゥナ。中心に穴のある、ドーナツ状の形をしたこの孤島の、第一の守り手である「聖女」、その座に長き修行の果てに就いた少女、サラ(表紙右)。 近年、国そのものが揺らぎ始めて「天罰」と呼ばれる謎の天災により揺らぎ始めた原因を探る中。辿り着いた理由は、国の心臓部分である宝珠が呪われていると言う事。そこまで突き止めた途端、呪いをかけた張本人であるガスパール王子に罪を押し付けられてしまい。王国騎士団に追われ、追い詰められてしまう。

 

「何、たまたま妙な光景が見えたものでね。つい手を下してしまった」

 

その場に現れた救世主、それは失われし魔法、「時」を操る大魔導師、ハルト(表紙左)。助力を願ってきたサラに、宝珠を対価にという条件を出し、契約し。王都へ潜入、宝珠を狙い動き出す。

 

だけどサラは、まだ知らなかった。そもそも宝珠とは何か、その正体。そして親友である修道女、アニマの正体も。 一つ状況が終わった、かと思えば状況はさらに最悪な方向へなだれ込み、新たな敵勢力が姿を現し。

 

明らかになるのは、天罰の正体とその目的。全てを犠牲にするその野望を食い止めるために向かうのは深淵へ。

 

「―――神話の続きだよ、聖女」

 

だけど、その先にまだどんでん返しは待っている。全てを知るハルトが明かすのは、女神の成した偉業の正体。空に浮かぶ原理は何か、その原理は何故空に浮かせたのか。一つの世界は、残る最後のお宝により終わりを告げて、二つ目の世界と一つになり。神話の続き、まだ未知なる世界は目の前に大きく広がって。見果てぬ世界へ二人で歩き出していくのである。

 

物凄く緻密な世界観が何度もひっくり返されそうになる中で明かされていく、構成の妙が光っている中にバディもの的な面白さのあるこの作品。真っ直ぐに骨太な作品を見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

最果ての聖女のクロニクル (講談社ラノベ文庫 ふ 3-1-1) | 冬茜 トム, がわこ |本 | 通販 | Amazon