読書感想:極彩の夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の刊行はなんと一年前。一体何があったのか、そもそも一巻完結だったのか、と思われていた読者様もおられるかもしれぬ。一体何があったのかというと。作者様であられる志馬なにがし先生が一度書き上げた上でこの作品はヒロインである小春の物語である、という事で視点を小春に変えて一から書き直されたらしい。だがきっとこの巻に限って言えばそれが一番良かった。前巻と今巻、合わせて一つなのだ、きっと。

 

 

さて前巻の内容を覚えておられる読者様は前巻の最後、どうなったかはご存じであろう。小春はまるで花火のように空を駆け抜けていき、後に遺され自身も病魔に侵され。それでもかけるは彼女の思いを胸に、また立ち上がって生きようとしていた。 その結末は変わるわけではない。しかし、其処に至るまでにも彼等の人生はあった。奇跡がずっと続くわけではないけれど、奇跡があったからこそ続いた日々があった。それを描いていくのである。

 

「かけるくんは過保護なんです」

 

病魔を何とか克服し復学、しかし小春の学年は進まず。それでもかけるは就活の傍らでなるべく隣に寄り添い、大学にも積極的に顔を出し。小春にとって過保護なほど、しかし彼氏としては満点なくらいに隣に居て。

 

一足お先に就活に進むかけるが見据えるのは、恋人としての次のステップ、結婚。だけどこのままでは頼り続けるばかりだからと、花嫁修業を始める小春。しかし田舎の祖母の死、集まった親戚の悪意なき言葉と、父親からの肯定に心を揺らしてしまう。どこまでいっても自分は人とは違う、当たり前の事も出来ない。こんな自分でいいのか、と。

 

「きっとかけるも、小春ちゃんを心から愛してる」

 

その中でかけるの帰省についていき、彼の両親に温かく歓迎されて。彼氏の母親の何も関係なく真っ直ぐに認める言葉と、かけるが用意しているとあるものの事を聞き。改めて頑張らねば、と心を奮い立たせていく。

 

「僕と、結婚してください」

 

かけるの隣に並べるように、普通の人のように、皆に認めてもらえるように。一人暮らしを決意する小春。 彼女の父親との一対一の飲みの場で、真っ直ぐに父親への啖呵と彼女への愛を叩きつけ。 まるで銀河の中のような景色の中、小春の手に輝くのは何よりもまばゆい星。 真っ直ぐに伝え、小春も当然それを受け入れ。一組の夫婦はこの世に生まれる。

 

「出会ってくれて、ありがとう。 私を選んでくれて、ありがとう」

 

一杯大変な事もあったけれど、そこに確かに愛はあって。 無理だと思われていた子供にも恵まれて。きっと最後の一瞬まで、彼女は幸せであった。それは間違いないのだ。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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