さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は「科挙」、と呼ばれる試験についてご存じであろうか。聞いたことのある、という読者様の方が多分少ないかもしれない。何かと言うと、簡単に言えば古代中国から、近代くらいまでの時代の間で行われていた役員登用試験、である。この試験、一体どんなものかと調べてみると。まぁとんでもない内容、一般的な高校のテスト辺りと比較してみれば範囲がとんでもない事になっているのである。
なんせまず前提として覚えるべきが四十万文字以上、そこから応用まで求められる訳で。 世界一キツい試験といっても過言ではないかもしれない。この作品はそんな、科挙と呼ばれる試験を舞台にしたお話なのである。
そも、科挙というのは試験一発で終わりではない。県試、府試、院試と進み。院試に受かっても国立学校に入学するのを許されるだけ、そして学校で優秀な成績を収めねば本試験にすら進めない。 気が長すぎやしないか? と思わずツッコミたくなるその倍率、作中でおよそ三千倍。更には県試ですら一回ではなく五回連続、という気の遠くなるもの。 その第一歩、県試に挑もうとする主人公、雪蓮。 彼女は正体を隠し、男性として試験を受けようとしていた。
「私は堂々たる官吏になって世界を変えたいんだ」
何故か。それは科挙というのは男性しか受けれぬものだから。しかし受付で揉めていた者が一人、その名も梨玉(表紙)。近辺の大洪水にあった村の出身である彼女は、姉の形見で女装しているという設定で、役人に賄賂を送って戸籍上でも男性になり。彼女を助けた事で何故か懐かれ、部屋にまで押しかけられて。 纏わりつかれる事となる。
が、しかし。ルール整備がされていないこの時代の科挙は、とんでもない事が起きても当たり前。受験生が被害者となる殺人事件、その中で明かされるのは役人の腐敗。その先に待っている次のステージの試験は、中央からやってきた役人の手により、個人戦の筈がチーム戦に様相を変え。
「その道は地獄ですぞ」
「構わない」
正に地獄、その先に待っているのも地獄。それでも、と雪蓮は突き進む。その胸に燃えているのは、自分だけの革命の炎。変えたいものがある、だからこそ立ち止まるわけにはいかぬ。 その先、まだまだ試験という戦いは続く。その中で重要となるのは、信の力。 孔子も説いたその意味こそが、力となるのである。
紐解けば割と容赦なし、割と命がけな世界観の中で少女達の友情と熱さが光るこの作品。熱い試験ものを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。