読書感想:俺は義妹に嘘をつく ~血の繋がらない妹を俺が引き取ることにした~

 

 

 さて、画面の前の読者の皆様と作者様に、まず最初に謝罪させていただきたい。半年間も積読にしていて誠に申し訳ございませんでした。 何せ読もうとした、物凄く重くてビターに過ぎるという評判が聞こえてきて、躊躇ってしまいそのままずるずると、という感じだったのである。しかしいつまでも積読にしておくわけにもいかぬので。そろそろこの作品の感想を書いていきたい次第である。

 

 

ではこの作品、どんな作品なのかというと。一言で言ってしまえば、物凄く重い。そして苦くて痛くて苦しい。 本当にラノベか? と思わず首をひねってしまう程なのである。

 

生まれてすぐに両親が雲隠れして孤児となり、養母とその夫に引き取られ。その二人が離婚、その後別の男と再婚し、悠羽(表紙)という義妹が生まれ。

 

「お前抜きで家族をやり直したいんだ」

 

そして大学入試の直前に父親にそんな事を言われ、高校卒業と同時に家を出て二年。フリーターとして週七で働く青年、六郎。ある日、奈子という恋人が出来た悪友、圭次の惚気に付き合わされ、勢いでマッチングアプリを始める事となり。適当にプロフィールを作り上げ、マッチングした相手が何と悠羽で。 すぐにお互いがお互いであるという事に気づけど、それを誤魔化すかのように互いに嘘を交わし合い。 彼が今、どうしているのか気になった悠羽は六郎の元カノである寧音に連絡を取り、一先ず無事であると知り。 その先、ひょんな事から二人は現実で会う事になり、ぎくしゃくとした最下位と相成る。

 

最後はケンカ別れしたという記憶があるからこそ、どこかもどかしく。再会は何処か乾燥して終わり。だが、今度は六郎の方が悠羽の事が気になり始める。 家族としてやり直している筈の悠羽が幸せそうではない事、学校にも行っていないという事を。

 

「俺は、お前の味方でいたいと思ってるよ」

 

「たすけて、六郎」

 

心揺らした彼女が吐露する家族の現状。やり直したはずが崩壊直前、彼女はずっと放っておかれているのに、どちらが彼女を連れていくかでもめているという場。やっと引き出した助けを求める言葉を聞き。 六郎は動き出す。悪友である圭次の手も借り。

 

「みーつけた」

 

無論、悠羽を崩壊しかけているとはいえ、保護者の元から引き離すと言うのは並大抵の難しさではない。だからこそ切り札が必要。あくどい手も染め、父親と母親、それぞれが不利になる証拠をつかんで。 悠羽を圭次の元に預けた後、両親と一人で対峙し、今度は自分が主導権を握って選択肢を突き付け、完膚なきまでに叩き潰す。

 

まずは悠羽を自分の元において、かつての恩師たちにも相談し、勉学の遅れに対しての対策も整えて。なにくれとなく全部をくれる、全部用意してくれる。そんな彼に、悠羽が出来ることは何なのか。

 

「だって、私の幸せには―――六郎が必要なんだもん」

 

出来ることは何もないのか? 否、確かにある。分厚い嘘に隠れた、藻掻く彼の心を救うのは確かに彼女にしか出来ぬ。彼女の幸せには、彼が必要だから。

 

そうして、二人の関係は少しだけ変化して。幸せになる為の道が始まるのである。

 

痛くて苦くて、だから一筋の幸せが輝くこの作品。 重きに過ぎる作品が見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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