読書感想:陰キャだった俺の青春リベンジ 天使すぎるあの娘と歩むReライフ

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は、過去に戻りたいと思われた事はあるであろうか。やり直したい過去がある、塗り替えてしまいたい現在がある、見逃したくない後悔がある。そんな思いを抱かれる読者様はおられるであろうか。だとしたら、いったいいつ頃にタイムリープしてみたいであろうか。

 

 

という前書きから大体お察ししていただけたであろうが、この作品はタイムリープから始まるのである。そして、主人公が果たせなかった後悔を解決する為、奔走する作品なのである。

 

高卒でブラック企業に入社してしまい早十二年。日々激務で心身をすり減らす男、心一郎。母親は心労で早逝し、妹とは絶縁状態。彼には一つ、強烈な後悔があった。

 

 それは、かつての級友であるお嬢様、春華(表紙)の事。就職後、両親の会社の倒産と壮絶な職場でのイジメというコンボで心を病み自殺してしまった彼女を助けたかったと言う思い。だがしかし、そんな思いに誰かが答えようとしてくれたのか。心筋梗塞にも似た痛みに意識を失い、目覚めた先。彼は気が付いたら、高校二年生へとタイムリープしていたのである。

 

目の前に広がるのはあの日の日々、目の前で笑いかけてくれるのは失いたくないと思った彼女。もう後悔を繰り返さぬために、早速行動を開始する心一郎。

 

そんな彼の力となるのは何か。それは、皮肉にもブラック企業で生き抜いてきたという人生経験。この世全ての闇を煮詰めてきたような環境で生きてきたからこそ、高校時代にあるような厄介事なんて怖くもない。

 

身に着けた胆力は、あの日敵わなかったヤンキーを跳ね除け。春華に絡むギャルをも圧倒する力となり。心に残る後悔は、妹との切れかけていた絆を取り戻すきっかけとなり。どんどんと変わっていく心一郎は、周りをどんどんと見返していくほどに頭角を現していく。気が付かぬ間に、かつては遠巻きに見ていたクラスの喧騒の中心へと自分の位置が変わっていく。

 

「ありがとう新浜君―――私にこんなにも楽しい文化祭をくれて」

 

そして巡り来たあの日の文化祭。ブラック企業で培われた対応力と企画力で音頭を取り、全員を巻き込みクラスの出し物を盛り上げ。かつてのあの日では見れなかった春華の笑顔が、心一郎の瞳に焼き付いていく。

 

「新浜君の側に、私はいますよ」

 

(俺は―――紫条院さんが好きだ)

 

 その先、過去の悪夢にうなされる心一郎の心を、春華の優しい言葉が救い上げ。自分の中、本当の後悔に彼は気づく。かつてのあの日では諦めてしまった想い。彼女への、恋心を。

 

辛い記憶が全体を引き締める中、ハートフルな温かさのあるこの作品。正にレベルが高く、面白い。私はそう太鼓判を押したい。

 

ハートフルな面白さが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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