読書感想:いつもは真面目な委員長だけどキミの彼女になれるかな?3

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:いつもは真面目な委員長だけどキミの彼女になれるかな?2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 いつもは真面目な委員長だけどキミの彼女になれるかな? なれました。という訳で、前巻で紗良と陽都は恋人同士として彼らだけの完成型に辿り着いた訳であるが。並び立つ方向性に辿り着いた二人は今度は、最終巻ではどんな方向に進むのか、というと。並び立って刺激を与えあって。お互いを拠り所にそれぞれの問題、思いと向き合っていくのである。

 

 

 

「とりあえず挨拶が済んだから、問題さえ起こさなきゃ良いかなって思える」

 

紗良は母親に陽都と付き合いだしたと報告し、陽都はきちんと筋を通すために挨拶に訪れ。市議会議員であるが故に自分に問題がない人か、という事をしつこく確認してくる母親を何とかやり過ごし。名前で呼び合う、というステップに進んで迎えるのは夏休み。

 

「何ができるのか分からないですけど、胸を借ります」

 

前巻の「JKコン」にて繋がりの出来た「さくらWEB」から再び声がかかり。サマーフェスの裏司会が決まった穂華はそちらの方向へ、陽都たちは中園をメインに活動する事になり。さくらWEBのランキング入りを目指して企画を考え。大人達とも顔を突き合わせ、大人の世界、創作に携わる熱を持った者達の熱量を垣間見、心踊らせていく。

 

そんな中、陽都はもう一つ、問題に立ち向かう事になる。それは紗良の妹、友梨奈に関するもの。支援者の子供と付き合ってはいたが、中々のクズであったと気付いたためきっちりと別れを告げ。どこかぎくしゃくしている彼女の家庭、そこにも立ち向かっていく事となる。

 

「お母さんが大変なの、ざまあみろって思ってる自分に」

 

政治の世界に揉まれ困らされている母親、それをざまあみろと思ってしまう自分がちょっとだけ許せなくて。だからこっそり罪滅ぼしを、と願う彼女に付き合う事となり、夏祭りの準備を共に手伝う事になって。彼女にとって楽しい場所になれれば、という思いで頑張っていく。

 

そんな中、母親の不在時に暴走する思いがあって、友梨奈がその標的になって。自分一人で抱え込もうとする友梨奈を助けて。紗良は自分の思いを、ピアノという楽器の鳴らす音に託して。

 

「私にはそれがないから、やっぱり政治家にはなれないよ」

 

自分の事を母親失格、とは認めるもその建前で知ろうとはしない母親に、ひとつ自分の中で区切りをつけて。新しいかかわり方をしていくと決意し、友梨奈との蟠りもほどけて。

 

そんな彼女の事を知っていた街、というそこにあるものを見、陽都も自分の夢を確かな形にして。

 

「来年はあそこに見に行きたいな」

 

二人で交わすのは何気ない約束、それはこれから未来へと。ずっと続いていく約束なのだ。

 

 

何気ない日常が愛おしく、そのままに歩き出していく今巻。最後まで皆様も是非。

 

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