本編前巻はこちら↓
読書感想:声優ラジオのウラオモテ #09 夕陽とやすみは楽しみたい? - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、現在アニメ絶賛放映中、皆様はアニメの方はご覧になられているであろうか。原作を最新刊まで読んでいる読者様であれば、まだ丁々発止のやり取りの中に一種の確かな信頼感がある、段階の前、まだぶつかり合っている頃の千佳と由美子になつかしさを覚えられているかもしれない。そんな本編、そのちょっとした日常の小話を詰め込んだのが今巻なのである。
「本音を言えば、やりたくありません」
「渡辺、誕生日に欲しいもんある?」
コーコーセーラジオのお誕生日会、千佳がまぁ嫌々ながら周囲に意見を求めたりして、一生懸命に考えてプレゼントを選び。逆に由美子は正面からズバリと聞いて、千佳をあたふたさせてしまったり。
「なんかこう、凄まじい変態になった気分・・・・・・」
豪雨によって帰宅できなくなっためくるが由美子の家に泊まることになり、推しの家にお泊りというオタクからすれば夢、でしかないイベントにオタクとして舞い上がりそうになって自分を抑えるのに四苦八苦したり。
「この自堕落な時間こそ、『堕落の会』なんだよ・・・・・・!」
ライブ終了後に乙女が「堕落の会」と称して、好きな料理を栄養バランスも考えずこれでもかと作って、フィーバーしたり。
「・・・・・・・・・・・・。そういうことですか」
しかしそれだけではない。千佳と由美子やめくる、乙女たち声優の明るめな日常。その裏もう一つ描かれるのは、マネージャーのりんご達。言わば声優という存在を支える裏方の彼女達の、普段は描かれぬ部分。そこにあるのは、声優という光の裏、大人達の暗闘も入った見せられぬ陰の世界。
「大人はやるべきことをやろう」
あの大事件の背後、大人として声優たちを守るために頑張って。千佳も由美子も、ライブのメンバーに選ばれるほどに大きくなって。感無量の裏、不穏な動きを見せるのは新興の声優事務所。少数精鋭、そのメンバーを集める為にルール無視の引き抜きを仕掛けるその動きは、不和と不愉快の感情を招き、数々の声優事務所から警戒されているその事務所の社長、沙樹。りんごの先輩であり、かつて声優を守り切れなかったことに心を痛め去った、優しすぎる人。
「うちの事務所が守られるのなら、喜んでやるわ」
彼女が抱いていた、声優業界への疑問。 せめて自分の元では、泣く声優を作らぬ為。その為なら例え悪名を背負おうとも、全部の事務所を敵に回してでも。
「そうじゃないんだよ、先輩」
その理想は分かる、それで救われる、成長する声優もいるかもしれない。だけどそれでも。一丁前にラインを踏み越える沙樹は一緒に居たくない。そしてもう、そんな環境では生まれぬ輝きを知ったから、と。 りんごは首を振り、差し出された手を払うのだ。
語られぬ部分に光を当て、いつもとは違う味を出す今巻。シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
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