読書感想:ここでは猫の言葉で話せ3

 

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読書感想:ここでは猫の言葉で話せ2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品の主人公であるアーニャことアンナは、日本で大切な人を得、大切な仲間も得。正に遅れてきた人間性を取り戻さんかとするように日常を謳歌している訳であるが。猫アレルギーで誤魔化しているだけであり、その身を「家」が仕込んだ毒が蝕んでいる、というのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。とどのつまり、完全に解放されるためには、決着をつけるほかない。本当の意味で人間として生きていく為にも、いつの日か因縁は全て絶たねばならぬのである。

 

 

「まるで地獄の釜で茹でられているようだ・・・・・・」

 

だがしかし、初めての殺しの相手である「親友」の事を思い返したりもするアンナには喫緊で達成すべきミッションがある。それは夏休みを謳歌するという事。無論、普通の学生にとっては当たり前、簡単な話であろう。だが今まで殺人マシーンとして生きてきた彼女にとっては、夏休みは初めての事ばかり。

 

エアコンの故障で夏の暑さをダイレクトに受けて、ピロシキと同じようにひっくり返ったり。夏祭りに行くために旭姫に浴衣を着つけてもらえば、下着を履いてはいけないという間違った知識をそのままに行動してしまい旭姫を赤面させたり。

 

小花や旭姫、更には三姉妹と言った大切な仲間達と過ごす日々。ある時は皆で夏祭りに繰り出したり、またある時は皆で泊りで海に繰り出したり。それは機械だった彼女が初めて知る、人間らしい当たり前の時間。当たり前を積み重ねる事で、彼女はより人間に近くなっていく。

 

 ―――だが、その裏で一つ、因縁がアンナへと近づこうとしていた。明良と黒蜂が挑んだ簡単だったはずの仕事は、蓋を開けてみればきな臭さ満点の仕事であり。その中で保護した少女、凛音はとある重大な秘密を背負っていたのである。

 

それは彼女の中には、アンナに仕込まれた毒に対抗する免疫細胞があるという事。夜霧の手によりアンナを救うために、その愛の証明のために生け贄とされた、猫が嫌いな彼女。彼女の吐き出すような吐露は、こっそりとアンナの側に居た小花にも聞かれてしまい。連鎖的にアンナの全ての秘密を話す羽目になってしまう。

 

「出会ったときからずっと、わたしはアーニャのことが好き。大好きだよお?」

 

ともすれば拒絶の原因ともなりそうな彼女の秘密。それを真っ直ぐに小花は受け入れ、アーニャの居場所はここにあると示される。

 

だがその裏、秘かに脅威の魔の手は迫る。凛音、ひいては免疫細胞を狙い「家」の者達が密かに日本に侵入してきている。

 

だからこそ、衝突は避けられぬ。皆で生き延びる為、この因縁は断ち切らねばならぬ。ならば皆で、それこそ全員纏めて笑い合うための道はどこにあるのか。

 

次巻、最終巻。待ち受けるのはきっと、最後の決戦。それを早めに見届けたい次第である。

 

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