読書感想:ここでは猫の言葉で話せ2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:ここでは猫の言葉で話せ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品の主人公であるアーニャことアンナは人間兵器であるも、猫と猫を通しての人との関りにより少しずつ人間としての感情を取り戻していく、というのがこの作品の趣旨である、というのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。しかし、アーニャの今の立場と言うものは中々にマズいものであると言うのは皆様も何となくお察しではないだろうか。彼女は言ってしまえば不法入国した人間であり、しかも脱走した組織から追われる少女である。つまりは人間らしい感情を取り戻したとしても、いつかこの日々には終わりが来るのかもしれないのである。

 

 

そして彼女を狙うのは何も元々所属していた組織だけではない。他の組織も彼女を狙い動き出す、というのが今巻の流れなのである。

 

猫をもふもふしたり、小花の家に遊びに行ったり、風邪をひいてしまった彼女の家を訪ねたり。発作に悩まされることも少しずつ減る中、何気ない平和な日々は続いていた。それこそ、今まで神を信じていなかったのがささやかな日々が、少しでも永く続いてくれと祈ってしまう程に。

 

 しかし、その日々は長くは続かない。アーニャのうわさを聞きつけ、彼女を仲間へと取り込む為に米国のとある部隊が襲来する。その名は「グライアイ三姉妹」。長女ペムブレードー、次女エニュオー、三女ペルシスの三姉妹であり、世界から戦争を無くすと言う子供じみた夢を追う者達である。

 

小花を気に入ったエニュオーと、小花とのデートを賭けて一騎打ちに挑んだり。小花との約束を果たす為に東京へと出かけたり。その裏で、実は小さい子が大好きなペムブレードーが同居人である旭姫へと迫り、諫言で彼女を誑かし連れ去っていく。

 

「私はもう・・・・・・今この手の中にある、なにひとつだって失いたくはないんだ」

 

常識的に考えれば確かにそれが正しいのかもしれない。だけど、そんなものはごめん被る。胸に生まれた理不尽で非合理的な感情がそれを拒む。自分が人間兵器としての強さの代わりに得た人間としての弱さが、本当の自分自身であると今は分かるから。それは新しい強さ。非合理的な人間の、だからこその強さ。

 

「すべては、猫が教えてくれた」

 

 己の譲れぬ願いを賭けて巻き起こるペムブレードーとの戦い。自らもまた後悔を果たす為に、禁断の力にまで手を出し戦う、自分のもう一つの可能性である彼女との決着をつける鍵となるのは何か。それは猫が教えてくれたこと。人間の思いに関わらず、自由に生きる隣人が教えてくれた事。

 

猫とガルコメ、そしてバトル。三本の面白さの柱が確かに一つ、太くなる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。