読書感想:クズ勇者が優秀な回復師を追放したので、私達のパーティはもう終わりです

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様の中にも「ゆるキャン△」というアニメをご存じの方もおられるだろう。正確に言うと本日の深夜よりアニメ三期の放映が開始される訳だが。それはともかく、あのアニメはゆるくキャンプの魅力を書いている訳ではあるが。キャンプは慣れぬうちはあそこまでゆるくない、というのは皆様も知っておられるだろう。色々用意しなければいけぬものもあるし、初期投資の費用もかかるのである。

 

 

さて、そんな「ゆるキャン△」、ひいてはキャンプとはこの作品は関係ないわけであるが。キャンプ、ひいては野営的な行動をとる時にその中心をなす人、ゆるキャン△で言う所のしまりんがいなくなってしまったら、的なお話なのである。

 

「―――神よ、迷える者を救い給え!!」

 

人間も魔物も、しかし魔物はごく少数。分類に属するものと、能力に関するものの二種類のある「才能」を神様から授かるとある異世界。この異世界に出現した脅威、魔王。そんな存在を討伐に向かう旅の中、勇者は幼馴染である回復師を難癖つけて追放してしまい。しかし、唯一残ったパーティメンバーである魔法使い(表紙)ともども、そこらにいたゴブリンに殺されてしまい。何とか蘇生可能であった為、教会にて蘇生魔法により蘇生する。

 

ひとまず装備を取り戻し、ギルドに才能持ちの魔物が出現した事を報告に行ったら、田舎の村に才能持ちらしいゾンビが出現したと言う一報を聞き。勇者としての使命を息高らかに、早速村に向かい移動を開始する。

 

「また死んでしまってな」

 

 さて、この作品がどんな、的なお話かというのは先述したが。つまり回復師は回復からサポートまで、快適な冒険の全てを請け負っていた訳で。そんな存在を追放してしまえばどうなるか。全滅しかないのだ。

 

ゾンビに噛まれた、呪いを受けた。変な所では低体温症、更には食中毒まで。死に方の万国博覧会か、と言わんばかりに死にまくり。その度に太い後ろ盾である勇者の実家の力を使い準備を整え、何度も折れず進んでいく。

 

そんなドタバタな旅の中で見えていく、勇者という人間の本質。愚か者ではあるが、根っこは素直で真っ直ぐ。尊大なバカだが、使命には忠実。 言うなれば愛すべき馬鹿。しかし魔法使いだけは知っている。勇者の才能を持つ者はこの世界に二人いて、自分がついていく勇者は補欠であると言う事を。

 

「勇者様、絶対に魔王のもとまで行きましょうね」

 

それでも、勇者の手綱を握るのに苦労したり、お供として加わったイッヌ(※ミニチュアフェンリル)と非常食として加わったぶーちゃん(※呪いを受けた聖猪)の面倒も見たりしながら。魔法使いは勇者を見捨てない。それは何故か。そこには理由がある。本物の勇者ではなく補欠の勇者ではなくてはいけぬ理由が。

 

ご飯がおいしそうだったり、死にまくるコメディもあったり。その根底には重いものがあるこの作品。くすりと笑えるファンタジーを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: クズ勇者が優秀な回復師を追放したので、私達のパーティはもう終わりです (ダッシュエックス文庫) : 江本 マシメサ, GreeN: 本