読書感想:性悪天才幼馴染との勝負に負けて初体験を全部奪われる話2

 

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読書感想:性悪天才幼馴染との勝負に負けて初体験を全部奪われる話 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、わかばと小牧、「嫌い」という言葉で繋がった二人の関係であるが。確かに二人の関係は歪んでいる。小牧の歪みは言わずもがな、よく考えてみればわかばも結構歪んでいる。とっくに嫌いになっていてもおかしくないのに、自分がいないと、というお題目を立ててそばにいる。そう考えればこの二人、もどかしい関係といったも過言ではないのかもしれない。

 

 

嫌い、という言葉は言い換えればそこにまだ気持ちがあると言う事であろう。好きの本当の意味での反対は無関心。ならば嫌い、というのはまだマシな感情で、その内実は本当は好き、という感情に彩られている。ならばさっさと言ってしまえばいいのに、素直になってしまえばいいのに。しかしそれが出来ない、のがこの二人なのだ。

 

「・・・・・・嫌い。梅園なんて、大っ嫌い」

 

始まる夏休み、小牧に負けているからこそ独占される時間。今度はまるで刻み込むように歯形を付けられたり。そんな中、わかばの中に芽生えていく、知りたいと言う感情。嫌いな相手であるはずの自分に、わざわざ暇な時間を費やしてまでこだわる彼女、その本質を知りたくて。だけど思いは空回り、届かない手は空虚な言葉に溶けて消えていく。

 

「私のこと、忘れられるわけがない。だってわかばは、わかばだから」

 

プールで溺れかけて心配されたり、水族館で空回ったり。 小牧の要望により恋人同士としてのデート、時間を過ごす中。突き付けられる、もう忘れられぬと言う事実。 勝ったら忘れてやる、と決意はするけれど。それでもきっと、忘れられる訳はない。

 

「優しいじゃん。いつも優しい。わかばから与えられるものは、全部」

 

そんな彼女は、どれだけ傷つけても傍に居てくれる。何故なのか、何故、と。心揺らいでいく小牧。わかばが彼女の事をわからぬように、彼女もまた、わかばの事が分からないと問いかける。

 

「小牧は私の、大好きな友達だったから」

 

何故か、と聞かれて答えて見せるその理由。それはかつての友情を理由として。あの日、無邪気に信じていた、だけどあの日決定的に壊れて歪んでしまった、二人の友情。だけどまだ、嫌いという言葉で繋がっていても、友情めいたものはそこにあるから、と。その思いからそばにいるのだ、と自分でも分かってはいないけれど口にする。

 

より歪みの根底に迫って、それぞれの抱える歪みも見えて。その傍で胎動を始めている、もう一つの思い。それは二人の関係に、いつか絡むのか。

 

より狂おしく、差してくる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

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