前巻感想はこちら↓
読書感想：黒聖女様に溺愛されるようになった俺も彼女を溺愛している１ - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれている読者様であればこう思われた事はあるのではないか。溺愛、じゃないやん、と。それもまた仕方ない事かもしれない。何せまだ、深月と亜弥はまだ友達ですらない。前巻を読まれた読者様であれば何となくお察しであろう。この作品、もどかしい恋路を楽しむのが正解のお楽しみ方であることを。では今巻では、まず友情が成立するのだろうか。
先に言ってしまえば、まずそこまでいかない。そういう意味から考えても、まず主人公側に思いが募り始めている、というのも珍しい状況かもしれない。
「そ、そういうことなら。断る言い訳にもなりそうですし」
しかし、その関係性を変え得るかもしれないイベントは確かに始まる。不埒な先輩から言い寄られ、思わず深月がカバーに入るも遺恨を残して終わり。その目くらましとする為にも、深月側からのお礼も兼ねて。クリスマスと年末年始、共に予定の無かった二人は共に過ごす事となる。
クリスマス、神経衰弱でポーカーフェイスの出来ない亜弥に連勝を重ねたり、プレゼントを贈り合ったり。初詣、ちょっとだけ距離を詰めた亜弥が深月の服の裾を握ったり。
恋人同士では勿論ない、友人同士か、と言われるとちょっと違う。言葉にするには難しい、けれど何となく居心地の良いその関係のままに。年末から年始、更にはバレンタインへと。時にカフェで恋人同士に間違われ、その時限定で恋人同士のフリをしたりしながらも。やっぱり二人の関係は変わらない。
「そうですね。一之瀬がオレの友達だからですかね」
だけど、それでも。深月の方からは友情を感じている。だからこそ、彼女の知らぬ所で、心無い噂を流した不埒な先輩と相対し、手段を択ばず卑怯を選んででも、事態を強引に納める。
「私ってこんなにも気が短い怒りんぼでしたっけ？」
そんな彼女の心の中、まだ形にはならないけれど。それでも確かに、一つの思いが生まれ出る。無自覚なその気持ちは、華となればきっと、恋へと変わる気持ち。けれどまだ、その思いは自覚までは届かないのだ。
一歩進んで二歩下がる、ように見えて一歩半は進んでいる。結果だけ見ればわずかにでも前進しているこの恋路。新しい季節はすぐ間近、果たしてそこで思いは芽吹くのであろうか。
何かが変わってないように見えて、間違い探しなレベルで変わりだしている今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
黒聖女様に溺愛されるようになった俺も彼女を溺愛している 2 (HJ文庫 と 06-01-02) | ときたま, 秋乃える |本 | 通販 | Amazon
