読書感想:真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます1

 

 さて、この作品には特に関係は無いのだが、競馬好きな私の友人は、競馬と言うのは騎手に託された馬の馬質、それで競争という戦いに出るしかないと言っていた。つまり配られた手札の質はそれぞれ違うけれど、その限られた手札で勝負するしかない、という事なのだろうか。そう考えると深いものと言えるかもしれない。配られる手札を強くするために求められるのは結果、それを実現するのに必要なのは騎手の腕、という事なのかもしれない。

 

 

ではこの作品はどうなのか、というと。主人公である少年、ロークに配られている手札はそもそもない。故に既に場に出ている誰でも使える札と、自分の腕前のみで勝負するようなもの、と言えるかもしれない。

 

精霊と契約し、悪と戦う「精霊師」と呼ばれる職業があるとある異世界。精霊師の持つ霊力と契約した精霊の力を掛け合わせる為、精霊の強さこそが重要なこの世界で。精霊師を育成する「ユートレア学院」、その二年生であり学年次席のローク。

 

「呼び出す理由が無かっただけだ」

 

「何故、貴方は契約精霊を呼び出してくれないのですか?」

 

かの少年、特異な点が一つあった。それは如何なる戦いの場においても、契約精霊を呼び出さぬと言う事。誰にでもその場限りの契約を結べる「微精霊」と、自身の身に着けた剣術のみで戦い抜き、一度たりとて余裕の態度を崩さない。そんな彼に負けた新入生主席、レイア(表紙右)は彼に執着し、学園首席である王女、ミーシャ(表紙左)は興味津々ながらも、悲しみの感情も向ける。

 

では何故、契約精霊を呼び出さないのか? その答えは簡単、そもそも契約精霊がいないのだ。契約しようと魔法陣を描いたけれど何故か何の精霊も出てこず、それどころか直接契約を結ぼうとしても断られ。一体どういうことなのか? それも分からず、しかし必死に闘い続けているのだ。

 

「余裕ぶるには、少し早いぞ?」

 

そんな彼の前に立ち塞がるのは、遺跡の探索にて遭遇した邪悪な精霊やら、自分にはない契約精霊を従えた多数の精霊師達、つまりは全員格上、だからこそいつでも命がけ、一生懸命。必死に周囲を騙し、戦い抜いていくのだ。己に出来る戦い方で、時に手品のような戦い方で。

 

そんな彼に、学園の者達が注目していく。遺跡探索を経て彼を見直したレイアは素直に後輩として慕い始め、バトルジャンキーな後輩、燈は彼と戦ってみたいと興味津々に。故に彼には様々な因縁が絡み始め、いつの間にか知らない間に注目株となっていくのだ、様々な陣営から。

 

王道、時にドタバタ。そんな中で限られた手札で最大限の効果を叩きだす、そんな戦い方が見所であるこの作品。 細かめに彩られる戦闘が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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