読書感想:「門番やってろ」と言われ15年、突っ立ってる間に俺の魔力が9999(最強)に育ってました1

 

自分が物語の主役であって、学校一の美少女とのラブコメを。自分には特別な力があって、誰もが目を見張るような大活躍を。そんな想像、言い換えれば妄想、を画面の前の読者の皆様もされた事もあるかもしれない。多感な頃の妄想、それは中二病という青春の病に繋がるのかもしれない。しかし、そんな妄想というのは基本的には実現しない。現実と言うのはいつだって無情で非常である。

 

 

そして、これもまた確かな事がある。どんな仕事とて、この世の中には必要でありそこに貴賤というのは存在しない筈だ、という事。例えば世の人に敬遠されがちな介護職等の仕事。だがそんな仕事も、確かに誰かのためになり、社会の為になっているのだ。

 

異世界の街、サクラン。この街を守る騎士団の一員である三十歳の男、ロイル(表紙左から二人目)。彼の仕事、それは門番。特にくる事もない魔獣の襲撃に備えただ立っているだけ、モブなお仕事。呪われているのではないかというくらいに武器が使えず、故に門番に配置され十五年。これからは魔道具にやらせるという理由で彼は呆気なく解雇される。

 

「さて、行くか」

 

絶望、に陥る事もなかった。彼は夢であった冒険者になる事を決意し、解雇翌日に旅立つ。

 

「だったら、一緒に冒険者をやろうよっ!」

 

次の街に行く途中見つけたのは、解雇された聖女、ディズ(表紙右端)。彼女が転んでけがをしていて、何とかしたいと願ったら魔術が発生して。更にはハイオークの軍勢に襲われていた貴族令嬢に出会って、助けたいと願って。その瞬間、魔術が発生する。

 

一体どういうことなのか、この魔術は果たして魔術なのか? これは後に、「具現化魔術」と呼ばれるようになる、自ら思い描いた現象を具現化させると言う、大いなる可能性を齎すもの。 門番をやっている勤務時間中、妄想を磨いていたのが実は魔力修行に図らずしもなっていて。気が付かぬ間に彼は、魔術師として最強になっていたのである。

 

しかし、驕る事もなく。寧ろコミュ障なせいで、中々上手く伝えられなくて。そんな中で始まる冒険者生活の中で、ギルドの受付嬢であるモカ(表紙右から二人目)に気に入られたり、見習い魔術師なサンディ(表紙左端)に弟子入りを志願されたり。時にほのぼの、ドタバタな冒険者ライフを過ごす中、ひょんな事から何かを目論んでいる者達に目を付けられて、刺客を差し向けられたり。

 

「相手が悪かったのは、そっちの方だったな」

 

そんな中でも、止まらないワクワク。 そのワクワクを形にして、新たな魔術を生み出して。一つの戦いに決着をつけるのである。

 

愉快痛快、爽快な面白さのあるこの作品。心に清涼感を吹き込みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。