読書感想:黒幕ゲーム 学園の黒幕ですが完全犯罪で世界を救ってもいいですか?

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様は、「黒幕」と聞いてどんなアニメのキャラを連想されるであろうか。例えば絶対遵守の呪いを用いて軍隊染みたテロ組織を率いて戦い、最後は世界中の悪意を集めて死のうとした黒幕であろうか。それはともかく。黒幕、というのは実際の所楽なものではないのかもしれない。何せ自分から動くのではなく、誰かを駒として動かして。自分は決して表舞台に出ずに暗躍する、というのが常であるので。

 

 

と、まぁそんな「黒幕」という存在にこの作品はなっていく物語であり。黒幕として暗躍して、とある目標を目指していくお話なのだ。

 

三十年ほど前、この世界で観測されるようになった異能の力、通称「才能」。若年層の一パーセント程、日本全体では五十万人ほどいる「才能所持者」の中には、当然その力を邪な事に使う者もいて。そんな者達、才能犯罪者を取り締まるのが「捕獲者」と呼ばれる者達。そんな者達を育成する日本唯一の学園が永彩学園であり。集めたポイントに応じてランク分けされる捕獲者の中、日本に七人しかいないSランク捕獲者、「絶対条例」の「才能」を持つ光凛(表紙)に本作の主人公、来都は強いあこがれの気持ちを抱いていた。

 

「俺は・・・・・・お前をスカウトしたいんだよ」

 

そんな彼の「才能」、それは「限定未来視」。特定の人物の特定の未来を、就寝時の夢として見る、という自動発動系のもの。その予測される未来で見るのは、「ラビリンス」という犯罪組織による「捕獲者」組織の崩壊、そして光凛の死。その死を防ぎ、未来を変える為。来都の立てたプランは、完全犯罪組織の設立。 「ラビリンス」側に加わる裏切り者達の闇落ちを防ぎ、更には自分達にも目を向けさせると言う狙いの為。早速目指すのだ、この学園にいる犯罪者達のスカウトを。

 

世間を賑わせた怪盗たる輝夜、おちこぼれな暗殺者の羽依花、天才詐欺師な友戯、マッドサイエンティスト候補な一軍女子、瑠々。四人の個性的な仲間を集め、まずは手始めに研修にて起こる事件の裏で暗躍し。推理に介入し、事件を自分の手で引き起こし。まずは一つ、ほんの一つ。未来の裏切りの芽を摘む事には成功する。

 

けれど、まだ未来は変わってはいない。そして来都が制御すべきなのは、今スカウトした仲間達。彼等が闇落ちして光凛を殺す未来も変えねばならず。

 

「来都は、私の―――命の恩人なんだから」

 

そして、来都は「限定未来視」の副作用で忘れてしまっている。光凛の命を嘗て救い、彼女との間には運命的なまでの繋がりがある事を。 もし彼女の死の運命を変えれたら、それすらも忘れてしまうと言う事を。彼は知らない、光凛が彼の記憶を取り戻すために戦っていると言う事を。

 

今までとは一味違う、しかし確かな血脈を感じるゲーム的な戦い。その熱さを確かに感じるこの作品。作者様のファンである方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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