読書感想:この教室は、武力に守られている

 

さて、裏社会育ちの少年が一般社会、主に高校に潜入する、という大まかなあらすじを聞いて画面の前の読者の皆様はどんな作品を連想されるであろうか。同じレーベルから出版されている、フルメタル・パニック!シリーズを連想されるであろうか。もしくはニトロプラスから発売された某ゲーム、それを元にしたアニメ・・・(厳密に言えば裏社会育ちとは言えぬし青年だが)を連想されたであろうか。 そのような作品は、今の時代からすれば一昔前位の作風となるのかもしれない。だが、そういった作品も面白さがあるのも確かなのである。

 

 

「じゃ、景気よく一発頼む」

 

かしこまっ!

 

悪を裁くのは法ではなく銃と刃、犯罪を以て犯罪を制す。マフィアを裁くマフィア「ストレイシープ」。十五の小隊からなるその組織の中、東南アジアを担当する第四小隊の頭脳として日々任務に励む少年、景光(表紙右)。「怪力」の異能を持つ相棒、ミステリオーサ(表紙左)の能天気さと暴走に時に悩みながらの日々の中、フランスで難しい任務に励む第七小隊の代わりに彼等に舞い込むのは日本での任務。それはかつて三大名家と言われ今は没落した三国ヶ丘家の令嬢、御子を守れと言うもの。受けた恩を返す為、何より過去に対立していたマフィアが絡む為。彼等は彼女と同じ学園に編入し、近くで守るという形をとる。

 

(あとで文句言ってやる・・・・・・!)

 

が、しかし。やっぱり簡単にいくわけもなかった。今まで裏社会に身を置いてきたからこそ、物騒な発想ばかりが思い浮かぶも誤魔化せる景光はともかく、心のままに生きるミステリオーサが異端児とならぬ訳もなく。いきなりドタバタの騒ぎを巻き起こし、目立ってはいけないのに目立ってしまい。それでも、有名な殺し屋姉妹であるカテドラル姉妹の襲撃を始めとし、日常で不意に巻き起こる幾多の襲撃を乗り越えていく。

 

そんな中、景光が心に隠していた願いを叶える形で、ミステリオーサは高校生活をエンジョイしていく。御子と共に軽音同好会で活動し、共に青春を楽しんでいく。

 

だが、その最中。浮かんだ違和感は夢の舞台で結実し。実はすぐ側に居た望まずして黒幕となった者が牙を剥こうとする。

 

「もちろん、そいつらを叩き潰す」

 

「ん? ぶっ潰すけど?」

 

しかしそんな思惑は既に看破されている。そしてこの日々を守るならば容赦はしない。浮かび上がるのはかつて景光が所属していた組織。その組織へ襲撃を賭けるも、違和感はぬぐい切れず。その違和感は臨海学校で芽吹く。生きていた真の黒幕の思惑が彼等へと迫る。

 

対し、ミステリオーサ達を残し一人で戦おうとする景光。だが戦力差に圧倒され膝を突こうとする中、ミステリオーサともう一人の仲間は駆けつける。

 

「一人だったら勝てない相手も、三人集まったら勝てる」

 

そう、一人では勝てずとも三人でなら勝てる。彼と似た者同士、同じような境遇、考え方だとしても。隣にいる数が違えば、纏う絆が違えば。そこに負ける出目は存在しないのである。

 

圧倒的に駆け抜ける、心熱くする面白さがあるアクションまみれのこの作品。アクションで燃えたい読者様、粗削りな面白さが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

この教室は、武力に守られている (ファンタジア文庫) | 阪田 咲話, SOLar |本 | 通販 | Amazon