読書感想:デスゲームで救ってくれたから、私をあなたの好きにしていいよ

 

 さて、一般的な認識と言えば「デスゲーム」とは大金を賭けて行われる命がけのゲームであろう。それぞれの理由で金を求める者達により繰り広げられる命がけのゲーム。無論それはプレイヤー側から描けば緊張感でひりつく事間違いなしであろう。では運営側、画面の向こうで笑う者達から描けば、それはどんな視点となるのであろうか。

 

 

表向きには様々な事業を展開する巨大企業、裏の顔は国の経済を操り様々な決定権を持つ事で国家権力すらも介入できぬ裏カジノを仕切る企業、その名は「ラビリンス」。かの企業の中で表の顔は学生、裏の顔はSからFのランクで分けられる運営の人材の中で駆け出しのEランクを務める少年、与一。彼はいつも通り自分の担当したゲームで、自分がついたプレイヤーである少女、未来(表紙)をある目的のために不正で勝たせ。「ラビリンス」が運営する「私立迷宮学園」に転入するという選択肢を持ち掛けていた。

 

「これからの学園生活でも、きっと生き残ってみせるから・・・・・・!」

 

 だがしかし、転入してきた未来は与一に依存し、日常のすべてをデスゲームとして捉え、様々な騒動を巻き起こしていく。何故か。それは「デスゲ脳」(ラビリンス命名)と呼ばれる病に罹ってしまったから。極度の人間不信を根底に、最後には死に場所を求めてデスゲームへと舞い戻ってきてしまうという病である。

 

そんな病に侵された未来の治療の為、及び自身にかけられた不正の疑いを晴らすために与一は運営上層部より申し渡されたゲームに挑む事となる。その名も「友情人狼」。一週間の間に運営が一人だけ用意した「人狼」以外の友達を未来に作ると言うゲームである。

 

だがしかし、それが簡単にいくわけもない。未来は今、与一しか信用していないから。そんな彼女は今まで与一が助け、彼に惹かれている少女達と与一を巡りゲームでぶつかり合う。

 

ヤンデレ気質な図書館の主、葵とある一面において意気投合したり。純粋無垢な元気少女、緋色にやきもきしたり。社長令嬢でもある生徒会長、翠に一杯食わされたり。

 

時にぶつかり、時に皆で出かけた先で与一の後輩である月が主催するデスゲームに巻き込まれたり。

 

 そんな日常の中、繰り広げられる心理戦。与一のすぐ側に居る筈の「人狼」が仕掛けてくる狡猾な策。その策に立ち向かう与一の心の中に蠢くは復讐の思い。

 

かつてゲームにプレイヤーとして参加したとき、自身を庇い死んでしまった少女、厘の復讐の為、そして償いの為、全員を生き残らせ立ち向かう。

 

「あとのことは俺が必ず何とかするから、何も心配しないでくれ」

 

その優しさは「人狼」に対しても同じ。やむを得ず巻き込まれてしまった黒幕をも自身の出世を引き換えに救おうとする。それは優しさ、償いであるが故に。

 

けれど与一を待つ道は平坦ではない。運営上層部は彼の思惑に気付き「人質」を用意し。そして月にもまた、とんでもない秘密が隠されている。

 

正に誰が味方かも分からぬデスゲーム。ラブコメ、でありながらもひりつく心理戦。そんな二律背反な面白さが同時に楽しめるからこそ、この作品は面白い。

 

ひりつくラブコメが読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

デスゲームで救ってくれたから、私をあなたの好きにしていいよ (ファンタジア文庫) | 進九郎, PinkiO |本 | 通販 | Amazon