前巻感想はこちら↓
読書感想:「キスなんてできないでしょ?」と挑発する生意気な幼馴染をわからせてやったら、予想以上にデレた2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、いずれ夫婦になると言う未来は確定しているからいいものの、一颯と愛梨、この幼馴染カップル、もといコンビ、もどかしすぎやしないかと思われている読者様もおられるかもしれない。しかしまぁ仕方のない事かもしれぬ。何せ物語の流れ的に付き合ったらそこで試合終了、後はバカップル編スタート待ったなしであろう。だからこそこのもどかしい関係を楽しむのがこの作品においては正解なのではあるが。
しかし、一度動き出したものはそう簡単には止まらない。一度意識した思いはそう簡単には終わらない。 そしてあまり間延びさせてもいけない。だが付き合ったらそこでエンドマーク、果たしてどうすべきか? その難問に一つの答えを示し、確かに動くのが今巻なのである。
「女の子って、どういう時に告白したくなるものなんだ?」
「どんなシチュエーションだったら、告白したくなる?」
それぞれ親友に相談する、どうすれば相手に告白させられるかという悩み。 素直に好きと言えばいいのに、相手に認めさせたいと言う譲れぬプライド。そこがもどかしさの原因ではあるのだが、そこは譲れず。動き出した思いは抱えつつ、しかし足踏みしてしまう中、季節が巡る中で様々なイベントがやってくる。
クリスマス、前巻での学校サボりデートにより貯金を使い切ったので肩たたき券を贈ったら、何でも言う事を聞く券という事にされて、色々言う事を聞かされた上で愛梨の家にお泊りする事になったり。新年、合同で新年会をする事になったら、愛梨が間違えてアルコールを摂取してしまい、両親にキスをしたと言う事実がバレてしまったり。正月太りした愛梨に付き合わされ、一颯もダイエットする事になったり。
「くれるなら、もらおうかしら」
「そうか。じゃあ、準備しておく」
そして巡ってくるのは、恋人達の聖なる日であるバレンタイン。この二人には現状関係ない、と思いきや何故か一颯からも逆チョコを贈ることになって。それぞれ準備を進める中、少しだけ愛梨の思いが垣間見える。
自分よりも優れている、だから欲しい。でも建前がないと、安心して付き合えない。序列を作るのではなく、対等でいたいから。 思いを込めてチョコレートを贈って、込めた思いは自分で考えて、と突き放して。
「これからも、ずっと、一緒にいてくれないか?」
その先、覚悟を決めた一颯から飛び出すのは告白をある意味越えている、未来を見据える言葉。 しかしまだ彼は知らなかった。たった二文字を言っていないが故に、本心が伝わっていないと言う事を。
もどかしさ、に更に認識の齟齬という要素を絡めていく事で、よりもどかしい方向に突き進ませる準備が整う今巻。シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。