読書感想:虚ろなるレガリア3 All Hell Breaks Loose

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:虚ろなるレガリア2 龍と蒼く深い海の間で - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、力を持つ者、何かを成せる者、その在り方について触れてそれぞれの不死者達の思いに触れてみた前巻であるが、今巻では一体何に触れていくのか。それは先に言ってしまえば「真実」である。そも、真実とは何なのだろうか? 普遍的な真実と言う物はあれど、我々は日常生活の中でいつの間にか、誰かによって歪められた真実を、真実として記憶してしまってはいないだろうか。 ならば、本当の意味での真実は何処にあるのか。

 

 

と、そんな前置きはともかくとして、真実とは時に残酷なものであり、そして真実の中には誰も知らぬ真実と言うものもあるのだ。

 

 そう、今巻では様々な真実が明らかとなる。統合体が抱える本当の願い、魍獣と呼ばれる獣達の正体。そして八尋と珠衣の兄妹が絡む四年前の大災厄。八尋もまた知らなかった真実が明かされるのが今巻なのだ。

 

前巻の戦いの後、少しして。今までは無名であった筈の彩葉の動画再生回数が一夜にして百万回を突破すると言う、まるでトップクラスの動画配信者のような事態が巻き起こる。

 

 だがそれは、彩葉の魅力が伝わった、という意味ではなかった。その事態の裏にあったのは、「ヤマドー」こと山瀬道慈という暴露系動画配信者の暗躍。彼の動画により彩葉は龍の巫女であるという事実が暴かれ、世界から狙われる事になってしまったのである。

 

急ぎ身を隠すべき事態ではあるが、運悪くと言うべきか。何者かの思惑により八尋が連続殺人犯の嫌疑をかけられ、彼等は逃げられなくなってしまう。

 

 風の龍の不死者である道慈、そして巫女であるみやびのコンビにより引き離される彼等の間隙を突き、ギャルリー日本支部が戸籍上のジュリやロゼの兄にあたるアンドレアに襲撃され。更には解放された八尋へと、絢穂を人質に水の龍の巫女である澄華と不死者である善のコンビが迫る。

 

八尋へと怨みを抱く彼等は告げる、八尋こそが大災厄の犯人である龍であると。その事実を裏打ちするかのように、道慈と共に珠衣までもが襲来し。暴走し竜人となった八尋の力により、再び地獄の門が開かれてしまう。

 

「ヤヒロはもうわたしたちの家族だから」

 

 大混乱の中、明らかになる真実の中で各所で始まるそれぞれの戦い。その中へと彩葉は躊躇わず飛び込み、その姿と声が呪いに苦しむ八尋を解放する鍵となる。

 

許せぬ敵を前に得るのは新たな力。「地」ではなく「火」として。龍の力を否定するのではなく、受け入れて乗りこなす。新たな境地に達した力が、状況を覆す力を生む。

 

だが、戦いの先に待っているのは新たな戦いへの誘いと不穏な予感。絢穂の思いに答えるかのように輝く「宝器」、果たしてそれは何を生むのか。

 

シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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