読書感想:カルネアデス 2.孤高の吸血姫と孤独な迷い猫

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:カルネアデス 1.天使警察エルと気弱な悪魔 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で形成されたエルとイヴ、天使と悪魔の異色の凸凹コンビ。しかしこの舞台、匣庭を統べる女王はもう。そしてそれは、誰も知らぬ話。と言う所までは画面の前の読者の皆様もご存じであろう、前巻を読んでいれば。ではこの作品の作者であられる綾里けいし先生の作風とストーリー展開をご存じの方も多いであろう。 主人公勢は何かの真実が隠されている中、その真実に迫っていくけれど大抵の場合、その動きは一歩遅れている、という事を。その展開は、この作品でも本格的に始まっているのである。

 

 

 

「狩人、だけだ」

 

コンビで追いかけていた強盗殺人犯が抱えていた戦利品、それは吸血鬼の家に盗みに入ったという証拠。しかし意味ありげに笑う殺人犯の表情に何かを感じその家に向かってみれば、そこにあったのは無残に殺された吸血鬼。残留思念が遺した、彼が帰った、という言葉。それは、大昔に死んだ筈の人間の吸血鬼ハンター、その最後の狩人が復活した、という事。種族間に波乱が起きる予感を感じながら、ノアへの借りゆえに従う事となる。

 

しかし、どうも事態は既に大分不味いところまで進んでいるらしかった。既に五人殺された吸血鬼、更には予告を出された吸血鬼の元に向かえばそれは罠、届けられる宣戦布告、求められたのは「女王の冠」。最早避けられぬ激突。ノアの意外な正体も判明する中、最早激突は避けられず。ノアの一族の軍勢と、最後の狩人に率いられた一族がぶつかり合う中、狩人の肉体はどうも変質しているらしいと判明し絶体絶命、そこへ現れたハツネが女王の冠の場所を知っていると宣言し。彼女が連れ去られ、最初の激突はエルやノア達以外が全員死んで終わる。

 

「猫が迷ったら、救うのは飼い主の仕事」

 

助け出す、その為にハツネの血を用いて創り出した、女王の元へ繋がる扉の先へ。そこでエルが目撃したのは、女王のようで女王ではない何者か。ここは墓場だ、その意味を問う暇もなく、最終決戦の幕は容赦なく上がる。

 

判明するのは、狩人の遺体を用いた、とある種族の恐るべき思惑。ノアの命を賭けた奥の手が発動し、その命と引き換えに戦いは終わり。抜け殻のようになったハツネの元、約束を果たすべく彼女は帰ってくる。

 

「女王はもう、死んでいるのかもしれない」

 

だけど、それでも。最早種族間の関係は緊張状態は避けられず。生み出されてしまった扉はそこに残り。エルが恐ろしい想像へ辿り着く中、黒幕の本丸はいよいよその腰を上げていく。

 

より救えぬ世界へ踏み込む中、エルとイヴのものとは違った絆が光る今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。