読書感想:アイアム・ゴブリン ~おバカなクラスメイトたちと過ごす異世界スローライフ~

 

 さてゴブリンと言えば、最近の画面の前の読者の皆様にとっては転スラ辺りか、それともゴブスレ辺りの印象が強いのであろうか。ゴブスレのゴブリンは、かなり生き方と言う業をリアルに描き切っているので、苦手な人は苦手であるのかもしれないが。で、そのゴブリンであるが。私の感覚からすればその容姿という部分においてニパターンある気がする。ゴブスレみたくリアルな魔物のゴブリンか、それとも割と人間寄りの身体つきにゴブリンの要素を足した人間型、かといった感じである。

 

 

ではこの作品においてはどうなのか。タイプ的に言えば後者、ではある。しかしアイアム・ゴブリンとは言っているけれど、実際は本当にゴブリンではない。どういう事なのか。それはこれから見ていきたい。

 

「彼女ってさ~、ぶっちゃけ、おバカじゃない?」

 

元プロゲーマー、現在は一般人の少年、誉。彼がある日従姉である美園先生から呼び出され依頼されたのは、日本を裏で操っていると言う噂のある大財閥の一員であり、理事長の孫娘でもある茅果(表紙)の教育。彼女は所謂勉強のできるけど馬鹿、という類、天然ゆえの馬鹿であり。その教育にゲームを用いるという美園先生の口八丁に知らずの内に巻き込まれ。気が付いた時には逃げられなくなってしまう。彼としてはプロゲーマー時代の痛い言動が黒歴史になっているから断りたかったのだが。

 

更に現れるのは、まだまだいた馬鹿共。キングオブおバカと呼ばれる未来、彼女より成績の悪いワーストバカなギャル、萌奈。対人苦手な残念系おバカの杏寿、かつての誉の言動に憧れて中二病になった多恵。彼女達も集まって、誉はコーチとなる形で。かつて彼が世界を獲ったMOVA、「エヴァミリオン」へとダイブする。

 

「何かがおかしい。一度全員で集合しよう」

 

が、しかし。予想外の事態はいきなり発生する。はじまりの街に出る筈が見慣れぬ森、更に自分はゴブリン、茅果はエルフ、多恵はスライム、杏寿は何故かサキュバス、萌奈はブラックマジシャン、未来は超レアなボーパルバニーアバターの姿である魔物の姿になってしまっていたのだ。

 

「いや、お前ら諦めんの早すぎだろ!?」

 

とりあえず察したのは自分達はどう考えてもゲーム世界を舞台にした異世界に転移してしまったらしい、という事。そして自分達は今、魔物の姿であり現地人に受け入れてもらえるわけもなく。一先ず纏まって行動しなければ、とは思うものの。制御できない馬鹿共が、誉が何とか纏めようとする締めを振り切って好き勝手に動き始めてしまう。

 

 

「ちげえよ! 頼むから俺の話を聞いてくれよ!」

 

交渉も一苦労、そもそも行動が予想不能。更には異世界人も割と頭が悪い馬鹿よりの人物ばかり。話を聞かない馬鹿ばかり、誉のツッコミが冴え渡り。時には熱いバトルもしたりして。食料を探したり家を創ったり、と自分達に出来ることをこつこつして生き抜いていくのである。

 

ハマればハマるかもしれぬ、尖った笑いに溢れているこの作品。尖りめな作品を見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。