読書感想:物語に一切関係ないタイプの強キャラに転生しました

 

 さて、時にRPGと呼ばれるジャンルのゲームをプレイされた読者様は数多いであろう。そんなゲームにおいては本筋に関わる人物、というのは文字通り一定数いる訳であるが、例えば街にいる住人、その1人1人まで関わっていく訳ではない。本筋に関わるキャラより、関わらないキャラの方がきっと、圧倒的に多いであろう。そういった人物達こそモブ、と呼ばれるかもしれない。しかしそんな人物達の中に強者がいないか、というと。実はそんな事もないかもしれない。

 

 

言うなれば在野の原石、とでも言うべきか。 逆に言えば描写されぬ人物だからこそ設定を盛っても許される、のかもしれない。この作品もそう言った感じの作品なのである。

 

現代技術が入り混じったファンタジー世界を舞台にした、やり込み要素も多い和製RPG、「ネオンライト」。様々なグッズも販売されるほどに人気であったこのゲームに、一生分の情熱を費やしているとある社畜の男。彼はある日、このゲームの世界に転生する。その名はルクス(表紙左)。彼は一体、ネオンライトの世界ではどんな役割かと言うと。何の役割もない、只のモブ。ただ舞台にいるだけの人物。だからこそこの世界でも、とりあえず生きていくために社畜となっていく。

 

「私の王子様、ようやく見つけられましたー・・・・・・」

 

が、しかし。こっそり副業としてやっている警備のバイトで何でもない工場を警備していたら、まるで賽が転がるようにとんでもない方向に進み始める。謎の組織の襲撃、一先ず自身の力、魔法剣で逃げた先、そこにいたのはフレーバーテキストだけで出てきたキャラ、タナトス(表紙右)。彼女を助けて逃げた所で追ってきたのは、彼女の双子の姉妹であり第一面のボス、リヴィア(表紙中央)。目覚めたタナトスに刷り込みが如く懐かれ、気が付けば悪龍である二人が家に同居する事となる。

 

まぁ追い出す事も出来なくて、ニート満喫中な二人に奉仕されそうになって振り回されたり。三人でテーマパークに出かけてみたら、先のステージのボスと遭遇して、それをぶっ飛ばしたら巡り巡って本筋の主人公が心折れることになってしまったり。

 

 

「のんびり幸せに生きていける世界を作るんだよっ」

 

正に未知数に、気が付かぬ間に舞台をかき乱していくルクス。その活躍にラスボスまで目を付けて来て、いきなりラストバトルが始まりそうになったり。それでも望むのは只一つ、のんびりとした穏やかな幸せのみ。だからこそ、時に溜息をつきながらも戦うのである。

 

愛するゲームをぶち壊さないように戦う、どこか緩い空気が面白いこの作品。一風変わったファンタジーを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 物語に一切関係ないタイプの強キャラに転生しました (角川スニーカー文庫) : 音々, Genyaky: 本