読書感想:非科学的な犯罪事件を解決するために必要なものは何ですか?

 

さて、最近探偵もの、ミステリものが増えてきた気がする、というのはどこかで語った気がするが、ミステリものの派生形の一つとして異能ミステリ、なるものも増えてきている気がするのは私だけだろうか。異能、それは正しく超常的な力であり、人知の及ばぬ範囲の力。言ってしまえばいくらでも盛れる、といっても過言ではない力。そんな力の絡まる犯罪と言うのは、不可能犯罪も余裕であり。取り扱いが中々難しい、と言ってもいいかもしれない。

 

 

さて、ではこの作品の主人公である女子高生、燐香(表紙)が持っているのはどんな力なのか。それは「精神干渉」。他人の心をハッキングしたり、考えを誘導したり。一見すれば大したことのない力、に見えるかもしれないが。しかしこの作品を読んでいけばお分かりになるだろう。この力、応用性があり過ぎて逆に頭の悪い人間には持たせてはいけないと言うことが。

 

「率直に聞く、君は何か特別な力を持っていないか?」

 

しかし彼女は平凡な一般人として生きていたかった、だけど高校入学の日の朝、学校に向かうバスで遭遇したのはバスジャック事件。どういう確率だ、と言いたくなるのを余所に、更に奇跡的に乗り合わせていた警察官、上矢によって事件は解決に導かれた後、彼からいきなり問いかけられるも、何とか誤魔化す事に成功する。

 

が、しかし。その関りは一度だけには収まらなかった。燐香と妹である桐佳だけしかいなかった家に突然侵入してきた変質者、それを異能力で撃退して、事件の対応にやってきたのは上矢。彼の対応に信用できるものを感じ取りつつ、彼女は最近世間を騒がせている子供達の密室誘拐事件の犯人に辿り着き。自分の平穏の為に何とかしようと、その潜伏場所に向けて動き出す。

 

「私、ちょっとだけ凄いことができるんです」

 

その場で居合わせたのは、こちらも自身のルートから犯人に辿り着いていた上矢。やむを得ず始める共同戦線、自分を庇い傷ついた彼を守る為に解き放つ、徒に磨き上げてきたその力。その先に彼の抱える事情と正義に関する思いを知り。彼の捜査に協力する事を決め。更にその奥にいた、黒幕の一端にまで辿り着いて、頭をいじくりまわして手にかける。

 

「・・・・・・これが、異能の関わる事件ですよ」

 

しかし彼等はまだ、地獄の一丁目、まだ大きなうねりの入り口に立ったに過ぎない。まだ大きすぎる予感を感じさせる組織、世の裏の闇の一端に触れたに過ぎない。そんな彼らに、まだ見ぬ犯罪者達は容赦なく牙を剥く。迫り来るのである。

 

意外と硬派、バトルもある中に正義を巡る熱さがあるこの作品。重めな作品を読んでみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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