読書感想:ラスボス討伐後に始める二周目冒険者ライフ はじまりの街でワケあり美少女たちがめちゃくちゃ懐いてきます

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様はRPGに時々存在する転職システムはご存じであろうか。まぁ多分、ドラクエ辺りに存在していたはずなので、その辺りをプレイされた事のある読者様ならご存じであろう。そんなシステムにおいて前職で培ったスキルを次の職業に一部引き継ぐことで、次の職業を更に強くする、という手法があったかもしれない。 そんなプレイスキルもあったかもしれない。

 

 

と、まぁそんな訳であるが。この作品はそんな、「転職」という概念が重要になってくる世界観なのである。

 

―――神を驚かせるようなことができたら、勝手に向こうからへりくだってくるさ。

 

生まれながらに神によって「職業」が定められているとある異世界。かの世界に生まれた少年、マイトの職業は「盗賊」、更には魔力一切なしという稀有な不能であった為に親に捨てられてしまい、歓楽街の路地裏で暮らし。熱病に侵されていたところを流れの冒険者達に助けられ。神を驚かせるような事が出来たら、という言葉を唯一の希望とし、盗賊の腕をひたすら磨き。やがて、世界の果てに住んでいる魔竜を討伐するパーティーの一員となり。しかし、魔竜の死に際の「死の呪い」を仲間に変わり引き受けた事で、死を迎える。

 

「ここで冒険は終わりだと思ってたが、まだ続けられて、なりたかった職業にもなれるんだ。苦労はするだろうが、後悔はしない」

 

死の間際のロスタイム、彼の元を訪ねてきたのは女神様。何か一つご褒美を、と言われて魔法職の頂点である「賢者」になりたいと願えば、それは叶うが、レベルが現在の99から1に戻り、しかも生来持つ才能に合わせた魔法を覚える事になるのでどんな魔法を覚えるか分からないと言われ。それでもいい、と願った事で。彼は賢者として、十五歳くらいに若返った上で、生まれ故郷とも言えるはじまりの街に転生する。

 

「そこのあなた、ちょっといい?」

 

一先ず初心者ギルドに登録し、また冒険者になろうとした矢先。新米冒険者であるリスティ(表紙中央)がギルドに持ち込んでいた宝箱の錠前が光ったかと思えば、マイトの手の中に対応するらしき鍵が出現し。その宝箱を開いたことで、彼に使える魔法の一端、錠前に対応する鍵を創り出せる魔法が判明する。

 

その後、彼を見守っていた女神様により仄めかされるのは妙な事実。どうも「戻った」という単純な訳ではなく、盗賊としての身体能力はそのまま、更にレベル的に開けられる訳もない宝箱を開けられたという事。

 

「俺をみんなのパーティに入れてくれ。できるだけの働きはする」

 

そんな事になっているとも露知らず、マイトはリスティたちの荷物を狙った盗賊たちを撃退した事で懐かれて、彼女の仲間になることになり。「パラディン」であるプラチナ(表紙左)、薬師のナナセ(表紙右)といった少女達とも絆を結んでいく事となり、共にクエストに挑んでいく事となる。

 

村を襲う謎の現象に立ち向かう事になったら、封印されていた神様を発見したり。着実にレベルを上げていく中、かつての上司たちと再会したり。そんな中判明していくのは、リスティとプラチナたちが隠した秘密、そしてマイトの魔法の本質。

 

それは、あらゆる鍵を開ける力。その対象はあらゆるもの、仲間の鍵をあければ隠された力を引き出し、そして引き出した力を自らの力として扱えると言うもの。その力と盗賊としての技能、経験、身体能力が合わさって、彼だけの賢者としての形が生まれていく。

 

その力は、はじまりの街の近くに襲来した魔族との戦いで存分に発揮される事となる。二体の魔族との戦いの中、皆を守るために。

 

「俺はもう、欲しかったものを手に入れたからな」

 

既に願ったものは手に入れたから。だから、この手に入れたもので守り抜くために。

 

割と王道ちっくな、真っ直ぐなファンタジーであるこの作品。まっすぐな面白さを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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