読書感想:この恋、おくちにあいますか? ~優等生の白姫さんは問題児の俺と毎日キスしてる~

 

 さて、時にラノベの主人公と言うのは変にひねくれているというか、「誰も自分の事なんて分かろうとしない」、という妙に尖った部分があったりする訳であるが。そういう感性は年を取ってから見ると、黒歴史として悶えたくなりたくなるものであり、青春の未熟さを実感するものになってしまう事も多い。まぁ年を取ると分かるものである。相互理解と言うのは大切なものであり、理解してほしければ自分からの歩み寄りが重要であると言う事を。

 

 

 

が、しかし。そういう不器用なツッパリが出来るのは若さゆえの特権であるのも事実であり。まぁ微笑ましいものがあるのも確かである。この作品はそんな作品であり、自分自身を貫き通していくお話なのである。

 

「それと同じじゃねーの」

 

とある学校一の問題児、透衣。ピアス着用当たり前、教師の言う事なんて聞く気も無し。正義感の強い級友、風間と対立したりしつつ、教師から睨まれたりしつつ。しかし彼には夢がある、それは実家のレストランを継ぐという事。それ以外はどうでもいい、と日々実家でのバイトに励む彼。しかし現経営者である父親が帰って来て告げたのは、来年にこの店を閉めるという衝撃のお知らせ。

 

「おかしなこと言ってるのはお互い様」

 

 更に言われるのは、社長令嬢でもあり現役モデルでもある通称「S姫」、リラ(表紙)が実は許嫁であると言う事。当然受け入れる訳にはいかぬ、リラもまた結婚なんてしたくないと完璧な裏にあるちょっぴり腹黒な本心を明かし。彼女からいきなりキスをされ、それを証拠として保全されて。彼女が彼を更生させると宣言し、やむを得ず秘密の婚約者としての関わり合いが始まるのだ。

 

ある時は一緒に帰宅してみたり、またある時は一緒に体育倉庫に閉じ込められて見たり。色々ありつつ、キスをされたりしつつ。嫌々ながらも関わり、驚嘆と侮蔑を浮かべる周囲の目に晒されたり、時に決闘を挑まれたりしつつ。リラと関わり合う中で。彼女が抱えている思いと、周囲から尊とまれるような人物ではない、一人の女の子としての内面を目撃していく。

 

「それでいいじゃん」

 

その中で、少しずつ自分の思いが変わっていく。まるでハリネズミのように周囲を威嚇していたのが、彼女だけは受け入れていく。自分の心の中に、彼女のスペースが出来ていく。いわば、お互いに似た者同士、凸凹コンビ。晒せるものがあるから、お互いの前でだけは自然でいれる関係になっていく。我が儘だっていい、と受け入れられる関係になっていくのである。

 

凸凹コンビの粗削りな、しかしこの瞬間しかない輝きが満ちているこの作品。ちょっとあの頃みたいな感情を覗いてみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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