読書感想:たかが従姉妹との恋。2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:たかが従姉妹との恋。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品は「青い」ラブコメなのであり、前巻では幹隆を中心に舞台説明に終始した、と言えるかもしれない。では今巻は一体どんな動きをしていくのか。それははっきり言ってしまえば、本格的なスタートである。一つの行動がまるで蝶の羽ばたきのように、連鎖的に何かを呼び。幹隆を中心としたラブコメが、一気にギアをあげ始まっていくのが今巻なのだ。

 

 

前巻の事態より少し時が過ぎ、六月。新たな従妹との出会い、そしてお泊り会。その最中、暗闇の中の誰かのキス。そのキスで思い出していくのはこのお泊り会に至るまでに何があったのか、という事。

 

「人間なんてあんまり理解し合わない方がいいんです」

 

テスト勉強中のファミレスで出会った、自分の事を知るらしい、けれど自分の正体は明かさぬ「猫娘」と名乗る少女。不器用ながらも気の置けぬやり取りを繰り返した先で、彼女の正体が従妹の一人である流南であると知り。その妹である日和とも再会を果たし、従姉妹の輪が更に広がりを見せていく。

 

絢音や眞耶と出かけた小旅行、その中で振り返り天秤にかけるのは、絢音への気持ちと凪夏への思い。今も引きずる思いか、それとも今新たに芽生え始めた思いか。悩みの果てに、思いを断ち切る為に凪夏へ想いを告げる事を決め。幹隆は自分で選び、彼女に思いを告げる。

 

―――だがしかし、画面の前の読者の皆様もお気づきであろう。それは逃げだ、逃避だ。ある意味でそれは残酷な選択であり、最も不誠実な選択肢であると言う事を。そして、キスの問題は何も解決していないと言う事を。誰がキスしたクックロビン、犯人を捜す中で巡るのは衝動と諦めきれぬ思い。そしてそれを知った凪夏が心穏やかでいる訳もなく。前巻で垣間見せた強さを以て、彼等の関係へと襲い来る。

 

「四年経ってるんだよ。忘れろよ、そんなの」

 

今、隣にいるのは自分なのだから忘れろと、まるで上書きするかのようにキスをかまし。彼女に宣戦布告をされた絢音が一歩引いて逃げた事で、幹隆の中で思いが揺れる。どのような道をとるにしても、いずれ決着をつけなければいけないという思いが渦巻く。

 

「あんたは私のものだからね」

 

しかし、そこに外から差してくる影がある。彼女が独占欲をふと見せ、それを口にしたことで。幹隆の心の中、また新たな思いが渦を巻くのである。

 

言葉にならぬ思いが、鮮烈な思いがこれでもかと牙を剥いて攻めてくる、一気に面白さを増して駆けだしていく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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