読書感想:忍ばないとヤバい!

 

 さて、忍者と言うのは現代においてはスパイ、みたいな書かれ方をする事が多いわけであるが実際の所を調べてみると、スパイ以外、もしくはスパイ以上の事をしている事もある。そして、忍者とスパイ、そこに共通する事もある。その一つとして、周囲にその存在がバレてはいけないというのがあるのではないだろうか。正体がバレたら秘密性を持たぬ。故にその存在は、世に出てはいけぬのである。

 

 

 

そしてこの作品における日本には、まだ忍者と言う存在が人知れず現存しているのだ。秘匿された公的治安維持組織「半蔵門」。様々な理由で生まれる戸籍のない子供達を集め、日夜激しい訓練を繰り広げる先に、人としての限界を超えた「超忍」と呼ばれる闇に紛れて犯罪者を狩る者を生み出すための組織。その組織の見習い超忍であり、マオという謎の忍者に弟子として育てられた少年、忍。 いつの間にかとんでもない学力と運動能力を身に着け、更にはピアノ演奏能力まで身に着けていた彼は、超忍になるための最後の試験として、普通の高校に通い、一般人に紛れて卒業すると言う試験に臨む。

 

 

「ねえねえ、ニンニンって言ってみてよ」

 

最初の一年は、まぁ何とか乗り越えることが出来た。しかし二年目、突然やってきた転校生、雪(表紙)。話し上手の聞き上手なギャルである彼女は、何故か忍に絡んできてしかも何故か家まで押しかけて来て。 家出してるから泊めてくれ、といきなり宣う彼女に暗示をかけられそうになり。ここで一つ、事実が判明するのだ。

 

それは彼女が非政府系の忍者組織、「羅生門」の抜け忍であるという事。基本的には民間からの依頼を請け負う、内情的には金次第でどんな行為にも手を染める犯罪者集団。半蔵門の宿敵の一員である彼女を、忍の同居人であるマオは保護する事と決め。結果的に雪は、忍の家で同居する事となる。

 

同じく超忍の卵である茜と葵の姉弟とわちゃわちゃしたり。羅生門が売り出している巻物に関わる事件に立ち向かったり。忍がぼっちである理由が判明して、雪に慰められた里。わずか三週間の中に、様々な事が起きる中。雪を迎えに来た羅生門の忍者、「無害」との遭遇を切っ掛けに。雪に隠された秘密、そして彼女が家出した本当の理由が明らかとなる。

 

「俺が守るから。俺を信じてくれ」

 

別れの危機が来て気づく、彼女に振り回される日々がどれだけ大切であったのか。彼女に重なるのは、不要と判断されいなくなっていった仲間達、そして、家族に愛されず幸せと言うものを知らなかった、自分自身。だからこそ守る、と誓う。離さないと願う。そして、取り戻すために戦いに挑んでいくのである。

 

忍術と言う異能がぶつかり合う中、少年の成長と言う真っ直ぐな面白さがあるこの作品。忍者が好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 忍ばないとヤバい! (MF文庫J) : 藤川 恵蔵, 猫屋敷 ぷしお: 本