読書感想:陰キャぼっちは決めつけたい これは絶対陽キャのしわざ!

 

 

 さて、最近は陰キャ陽キャ、という枠組み、その絶対性は薄れつつあるのが世の流れであり、陽キャラも深夜アニメを見ていたりする、と聞いたことがあるが、ラノベもそれを表すように、陰キャ陽キャが住みわけをしていたり、お互いを知ろうとしていたり。相互理解をしようとする、という展開がある事が多い。そう考えると、陰キャ陽キャを疎み、という展開は今は昔、の展開なのかもしれない。

 

 

 

しかしこの作品におけるヒロイン、織羽(表紙)はそんなちょっと懐かしい考え方をしているのである。かつて中学時代に、とあるイベントで大失敗してクラスのグループからはぶられて。そんな中学時代を過ごした事で、彼女はすっかり陰キャをこじらせていたのである。

 

「アオハルしてる人たちがズルい!」

 

そんな彼女の中、育まれているのは沸々と煮え滾る怒り。もう青春はいい、上昇なんてクソくらえ。だからこそ陽キャを落とす、自分の位置まで。そんな復讐を目論む彼女に再会したのは、幼馴染である主人公、諒介。転校により友人グループに入れず、心の一部が弱気になってしまい、その分勉強にのめり込んだ事で。学校一の秀才と言う地位を得るも、友達は出来ず。織羽と再会した彼は、過去の償いで彼女の復讐に手を貸す事となり。彼女と共に、陽キャへの復讐が始まる。

 

「犯人は陽キャに決まってるわ!」

 

 

しかし、どうしたものか、と二人で頭を悩ませて。そんな中、ジャズ研究部の楽器が傷つけられた、という事件に遭遇し。織羽が復讐のチャンスを嗅ぎ取った事で、その事件の推理に向かう事となり。 気が付けば2人の、推理の日々が幕を開けるのである。

 

陽キャなギャルが、一瞬の間に無くしたポーチの謎。 動画投稿サイトに投稿された、不適切な炎上動画らしきもの。そして、陽キャに巻き起こるパパ活疑惑。それを解くのは織羽、というよりは諒介か? 確かに学校一の秀才である彼の頭脳は必要である。しかしそれだけでは駄目だ。事件に首を突っ込んで、時に僅かな閃きからヒントを齎す織羽の頭脳も必要なのである。探偵と助手、という訳ではなく。探偵と探偵、正に並び立つように。二人の頭脳だからこそ、些細な謎の真実を解き明かしていけるのである。

 

「これで公に陽キャに復讐できるだろ」

 

「・・・・・・うん、それはちょっと思った」

 

だが、織羽は気づいているのだろうか。 青春を諦めた彼女、しかし彼女が今過ごしているのは、正にここにある、ここにだけある青春であると言う事を。 陰キャは何も出来ない訳じゃない、確かにつかめるものがある。推理の先、確かに勝ち取れるものがあるのである。

 

ドタバタの中に日常のミステリーがある、ちょっとノスタルジックな香りもするかもしれぬ、ここにしかない青春があるこの作品。 ちょっと懐かしいかもしれぬ青春を読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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