読書感想:二番目な僕と一番の彼女

 

 さて、世の中には確率的に三人くらいは自分にそっくりな人がいるらしいが、皆様は自分のそっくりさんに出会われた事はあるであろうか。因みに私はあった事はない。また、例えばバラエティ番組等で有名人、または芸能人のそっくりさんがピックアップして描かれる事もあるであろう。しかし一口にそっくりさんと言っても、多くピックアップされるのは見た目であろうが、例えば名前、というのもあるであろう。そっくりと言っても、奥が深いのである。

 

 

その点においてであるがこの作品の主人公、佐藤一には同じ学校に通うそっくりさんがいる。そっくりなのは名前、何の因果か同姓同名。しかもそっくりな向こうは、学校中でモテモテのイケメンであるが、主人公である一の方は、中庸そのままといった感じの、何処にでもいるモブ。そんな経緯から彼は、「二番目君」という渾名で呼ばれていた。

 

「大丈夫だよ。僕は南野さんのことを嫌わない」

 

そんなある日、捨て猫を保護した、という縁で知り合ったのは絶大な人気を誇るパーフェクトヒロイン、千夏(表紙)。 一先ず動物病院に連れて行った後、一人暮らしである一の家で子猫を保護する事となり。その最中、誰とでも仲良くできる、という千夏の内面に隠されたものの一端を嗅ぎ取った事で。 一は千夏の抱えている問題、両親の離婚問題という部分を明かされる。

 

それを聞いても、一の内心は変わる事はなく。一先ず友人となり。子猫の面倒を見る、という名目で千夏が一の家の合鍵を手に入れ。子猫を通じて関わったり、一緒に里親を探したりする中で。千夏もまた、一の事、「二番目」と呼んでいる周囲が触れようともしない彼の事、について触れていく事となる。

 

一軒家で一人暮らしをしているという事。大学生や大人に混じり、ストバスをしているという事。そして、「妹を殺した」というロクでもない噂話を立てられていたと言う事。

 

「うち、謝らないから!」

 

 

根も葉もない噂、知ろうともしない周囲。その全てに千夏は怒りを向け、彼を貶そうとするものを全て言葉で切って捨てる。

 

「そんな佐藤は、絶対に誰が何と言っても『二番』でも『僕なんか』でもない!」

 

二番目なんかじゃない、僕なんか、でもない。今、自分の前にいるのは彼だから。二番も一番も関係ない。今、自分の前にいるのは彼、その1人だから。 好きになったのは、彼だけだから。 思いを一方的に伝え、ちょっとぎこちなくなって。調子を崩した千夏の母、涼夏に温かく見守られたり、ストバスでの友人、真司やその彼女である佳奈に応援されたりしながら。 向き合おうとする中、訪れるのは面倒事。千夏の父親が、千夏を連れて行こうとやってくる。

 

 

「僕は、僕らは子供でも、何もかもよくわからない程子供じゃないんですよ」

 

 

だが、そこで啖呵を切る、彼女の為に。父親の仮面の表情の裏に隠れた最低な内心を看破し、彼女を連れていく。

 

「何だろう、それが一番しっくり来たんだ」

 

その先に、傷ついた彼女を受け止め、凍り付いていた一の心も解けて。二人の関係は一歩進むのである。恋を超えた、しっくりくる形に。

 

言ってしまえば、王道、当たり前。事情を抱えた二人が出会い、惹かれ合って、恋をする。ただそれだけ。 だが、ただそれだけで、いい。口の中で転がすこの甘さと尊さは確かなものであり。正しく弾むような恋が繰り広げられる、綺麗なラブコメなのである。

 

美しめのラブコメが読みたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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