読書感想:俺だけデイリーミッションがあるダンジョン生活

 

 さて、フィンガースナップ、俗にいう指パッチンであるが、画面の前の読者の皆様は出来るであろうか。今放送中の仮面ライダーギーツの変身者の中の人は、変身ポーズに組み込まれているのにかかわらず出来ない為、SEに頼っているらしいが。というのはともかく、指パッチンというのは出来ても特にいい事はない。只できる、それのみである。

 

 

そんな小技がもし、スキルになったとしたらクソスキルな事請け合いであろう。だがそのスキルがもし進化したのなら。それは一騎当千の力となるのかもしれない。

 

クリスタルと呼ばれる貴重な資源や、異文明の遺産が眠るダンジョンが普通に発生し、それをダンジョン財団と呼ばれる組織が管理しているとある世界。かの世界に住む日本人であり、そこそこ多めに借りた奨学金を投資で百万倍に増やすと言う目標を立てたものの、パチンカスな兄に空にされた青年、英雄(表紙右)。泣く泣く就活に励んだり衝動的に自殺してみようとしてみたり。そんな彼の元に、ダンジョン財団から探索者の素質アリというお知らせが舞い込み。喜び勇んで彼は、父親から借りた軍資金片手に群馬に発生したダンジョンの元へと向かう。

 

「伝説の始まり・・・・・・?」

 

 が、しかし。彼に発現したスキルは「フィンガースナップ」というHPを消費して極わずかなダメージを与えるクソスキルのみ。指導役からも落ちこぼれと言われ、絶望したのも束の間。突如現れた謎のファイルに記されていたのは、「デイリーミッション」という謎の内容だったのである。

 

まずはジャケットを脱いだり捨てたりから始まり、合わせて五時間息を止めたりという内容もあったかと思えばどう考えても社会的に死ぬような内容まで。日々誰が届けているかも分からぬファイルに記されているデイリーミッション。それを多分皆もやっているという想像の元、日々こなしていく英雄。

 

 日々のミッションをこなすだけで、どんどんとレベルアップしていく。気が付けばフィンガースナップが進化し立派な攻撃手段となっていく。だがしかし彼は知らなかった。題名通り、そんな事態は彼にしか起きていないと言う事を。

 

だが誰も指摘しない、誤解と勘違いから英雄の思い込みが成立してしまい、気が付かぬ。そのままにダンジョンに潜り、日々モンスターを虐殺していく中。大学の同級生らしい修羅道(表紙左)と仲良くなったり、謎のマッドなドクターに絡まれたり。

 

「俺は待っていたのかもしれない、お前のような敵を」

 

そして時には、世界を滅ぼすような魔獣と期せずして激闘を繰り広げたり。圧倒的に知力が足りぬもそれに気づかず。自惚れのままに駆け抜けていくのだ。

 

登場人物全員曲者、そんな奴等が繰り広げるファンキーなドタバタに満ちたこの作品。もしかしたら色々な意味で笑えるかもしれない。なので、笑いを求めたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

俺だけデイリーミッションがあるダンジョン生活 (ファンタジア文庫) | ムサシノ・F・エナガ, 天野 英 |本 | 通販 | Amazon