読書感想:魔女のふろーらいふ

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は何かしらの旅行等で温泉に行かれた事はあるであろうか。温泉とは何も纏わず入るものであり、心も体も解れるリラックスできる場所である。そんな場所でそれこそ飽きるほどに、蕩けるまで湯につかる、というのはQOLの向上という面においては一年に一度くらいは体験しておくべき体験なのかもしれない。

 

 

という訳でこの作品についてご理解いただけたかと思うがこの作品は、温泉が舞台になる作品である。ゆるりと心解れる自然な温かさがある作品なのである。

 

祖父母の遺した温泉旅館を復興させたいと願う少女、ゆのか(表紙右)。静岡の修善寺のはずれにある知る人ぞ知る秘湯、「願いの湯」を訪れ願った彼女は突然の雷鳴と共にやってきた少女を保護するも、何故か記憶喪失である少女はゆのかを信じず翌日には家を抜け出しまるで魔法のような力で騒動を巻き起こす。

 

「どうして怖がらなきゃいけないの?」

 

しかし、ゆのかにとっては怖がるようなものでもなく。汚れてしまった彼女をお風呂に入れた時。何かが作用したのか、少女は記憶の一部を取り戻す。

 

「我の名は・・・・・・サピテトルー! 魔女じゃ!」

 

 彼女の名はサピテトルー(表紙左)。異世界の魔女。しかし彼女の記憶は一度では戻らず、携えていた魔導書らしき本には記憶を取り戻すヒントらしき、温泉の場所が記されていた。彼女の記憶を取り戻すべく、ゆのかはサピテトルーを連れ各地の温泉に繰り出す事を決め。自らが属する温泉同好会のメンバーである伊吹や八千代、リリヤもそこに巻き込まれ。記憶を取り戻すべく彼女達は各地の温泉に出かけていく。

 

無論、温泉とは温泉だけが醍醐味、ではない。温泉に行くまでだって冒険だ。観光地で美味しいご飯を食べたり、高い所で思わず足がすくんだり。時には資金を得るためにバイトして見たりなんかして。ほのぼのとした異世界交流が始まる中で。サピテトルーは今まで戦いばかりであった人生の中、初めてのやすらぎの時を得て。温かさと優しさに心ほぐされ、その心から気が付けば棘が取れていく。恐れられた魔女ではなく、一人の女の子としての幸せを得ていく。

 

その幸せに水を差さんとするのは異世界からの追手。未だにサピテトルーを危険視する者達はゆのか達も利用しようとし、話し合いも不要と言わんばかりに襲い来る。

 

「戦うことにも、憎み合う事にも、我は疲れた。どうじゃ、お主らもこの世界の温泉に入っていかぬか。我がもてなすぞ」

 

 対するに用いるのは、圧倒的な魔法か。いや、この世界に、自分にもうそんなものはいらない。排するのではなく手を伸ばす事、もてなす事。ゆのか達から学んだ精神でサピテトルーは追手と和解し。ゆのかの夢の一端を叶え、彼女達と日常に戻っていくのである。

 

こういうのでいいんだよ、と言わんばかりに当たり前で優しい日常が描かれるこの作品。ラノベに癒しを得たい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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