読書感想:姫騎士様のヒモ5

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:姫騎士様のヒモ4 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、姫騎士様のヒモ、第二部の始まり始まり。などと明るく言えるか、というと言える訳は多分無い、というのはこの作品を読まれている読者様であればご存じであろう。「灰色の隣人」という、この悪徳の集う街、誰もが皆何か昏いものを抱えているこの街。一度壊れて明るくなるか、と言われればそうではなく。寧ろより昏さは深まると言っても過言ではない。この街で生きる限り、誰しもがいつか昏さに巻き込まれていくとも言える。

 

 

しかしこの街で唯一、昏さに目を付けられていない少女がいるのも皆様はご存じであろう。そう、エイプリルだ。蝶よ花よと愛でられ、過保護に愛されているが故にこの街の昏さに中途半端な形で首を突っ込んでいる。そんな彼女に牙が向けられるのが今巻なのだ。

 

「これからはまっとうに生きたいんです」

 

前巻、訪ねて来たかつての仲間、ナタリー。マシューが預かっていた彼女の武器は彼女に帰り、この街で仕事を探すと言う彼女と一先ず別れ。しかしすぐに波乱はやってくる。

 

「一人くらいならば問題ない」

 

それは英雄となったアルウィンの影、更に疎まれるようになったマシューの事か。迷宮病が更に進みつつあるアルウィンの窮状か。それどころではない。エイプリルの祖父でありギルドマスターであるグレゴリーが、スタンピードの責任及び数々の罪状の疑いで捕らえられ。エイプリルが一人、放り出されてしまったのだ。 後ろ盾を無くした彼女をアルウィンの決定で二人の家に泊める事となり。 しかし彼女を引き取った事で、面倒事はやってくる。

 

それはグレゴリーの汚職の一部、ならず者が隠している莫大な隠し財産。それを知るのはグレゴリーのみ、その秘密を引き出すためにエイプリルが狙われ。ヴィンセント達も頼れない、頼れるのはデズくらいな中で。先に隠し財産を手に入れてしまおう、という事となり追いかけっこをしながらの宝探しが始まる。

 

「その話をあの子にしたのか?」

 

鍵を握るのは、エイプリルの家に時々来ていた野良猫。そしてその身柄を狙うのはならず者ばかりではなく、神器を求めて太陽教のくそったれな奴らまでが躍動する。色々な勢力を巻き込んで繰り広げた先、そこにあったのは財宝、そしてエイプリルの家族の秘密。そして、彼女が家族に会える機会は彼のせいで永遠に失われてしまった、という事実。

 

再びの悪徳に身を染め、その先に待つのはナタリーによる新たな波乱。かつての仲間との対決の予感膨らむ中、マシューの今後とは。

 

シリーズファンの皆様は是非。 きっと貴方も満足できるはずである。