読書感想:命短し恋せよ男女2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:命短し恋せよ男女 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で好位置と龍之介の献身により、ほのかと美澄も含めて四人の余命、という枷はとりあえず解けた訳であるが。画面の前の読者の皆様は、再発、の可能性を危惧されていたりするであろうか。その答えは先に言ってしまうと、今巻では語られない。穿った見方をしてしまうと、希望に満ち溢れている段階で仕掛けてくる、と危惧してしまうかもしれないが、とりあえず今巻では、そんな事は無い。 では今巻では何を描いていくのか。

 

 

 

それは、退院しごく普通の日常へと戻った四人の姿。病院から高校へと舞台を移しても変わらぬ、命における戦友である彼等の絆なのだ。

 

「男と女だから、どうなるかなんてわからないから」

 

前巻の最後、美澄から伝えられたのは龍之介との婚約話。と言っても別に晩餐会等で婚約者として出る、くらいしか現状やる事はなく。美澄の親も、それを大歓迎した事で好位置が気が付いた時にはどんどんとその話は進んで、二人での同居生活の話にまで進んでいる。

 

「今がそのピンチだ。 助けてほしい」

 

しかし、この話には一つ問題があった。 それはもしこの話が破談になると、美澄だけ別の学校になってしまう、という事。そうなればほのかが悲しむ、それは龍之介の望む所ではない。彼からのお願いにより、好位置も何故か二人の同居生活に加わる事となり。さらに流れでほのかも加わる事となり。気が付けば、四人で一緒に暮らす事となり。家事の割り振りという大切な部分を、じゃんけんという方法で決めたり。更には、四人でまるで普通のお泊りのように、皆で遊んだり。 大人の目を交えないからこそ、何処までも自由な彼等の生活は賑やかに繰り広げられていく。

 

「俺も全然負けていないと思えるまでは無理なんだと思う」

 

 

その中で、実は自頭の良いほのかの多才ぶりを垣間見たり。本人なりに、周りに馴染んでいく姿と、そんな彼女を思う龍之介の思いの強さを見て。 何故本当の恋人同士にならぬのか、という美澄の問いかけに自分なりの答えを返す。

 

そんな中、ほのか、美澄、龍之介からのドッキリが一週間のうちに挑みかかってくる、という企画に挑む事となり。 その中で動き出していく。ほのかの思いが。そして美澄の燻っていた思いが。

 

「好位置くんと、私は、カップルのフリをしてました!」

 

「のかちゃんごめん!」

 

 

そして、想いは口から言葉となって。好位置の心を別の意味で悩ませる問題が生まれるのである。

 

ころりと転がり、ことりと恋に落ちる音がする今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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