読書感想:命短し恋せよ男女

 

 さて、難病系ヒロインと聞いて画面の前の読者の皆様は誰を連想されるだろうか。某実写化もされた有名な電撃文庫ラノベのヒロインを連想された読者様もおられるかもしれない。若しくは先日MF文庫Jより刊行された某有名絵師様がイラストを手掛けるラノベのヒロインを連想されたラノベのヒロインを連想されるであろうか。という話題はともかく。難病系ヒロインの魅力というのは何処にあるのだろうか。儚さだろうか、それとも明日にはこの日常が終わるかもしれないと言うハラハラ感だろうか。

 

 

と、そんな話題から察していただけたかと思うがこの作品は難病系ヒロインがメインヒロインである。しかし難病なのはヒロインだけではない。話のメインを飾る四人の少年少女達全員が難病を抱えているのである。

 

全身性免疫蒼化症。それが主人公である少年、好位置につけられた病名。三年後の生存率は消費税より低いくらい。平均余命は約一年。いきなり突き付けられた残り時間に、希望は失われる。

 

「キミがわたしと一緒に滅びてくれる人だから」

 

......しかし、入院早々に個室である彼の病室に侵入してくる少女がいた。彼女の名はほのか(表紙)。好位置と同じ病気を抱え、生きる希望をノートに記す少女。恋に恋する彼女の恋の相手に選ばれた事により、二人のラブコメが幕を開ける。

 

自分もまた治療の副反応で辛いのに、彼の事を気遣うほのか。そんな彼女を助けたいと願い、ほのかは好位置に頼む。生きた証を残す為、カップルyoutuberの彼氏役になって欲しいと。

 

その願いを受け始める「命短し恋せよ男女チャンネル」、通称「のちこいチャンネル」。初っ端の動画で放送事故を起こしたりしながら、彼らに出来る方法でドタバタに撮影が始まっていく。

 

そこへ絡まっていくのは、これまた余命宣告を受けた二人。お坊ちゃまでありほのかに好意を抱く少年、龍之介がスポンサーとなり。更にはVtuberをやっている毒舌堕天使系な好位置の元カノ、美澄まで絡んでくる事となり。気が付けば、四人でチームのようになっていく。

 

ある時は、噂を調査したり。またある時はガールズトークをしてみたり。小さな世界で病衣に身を包みながら。けれどそこにある、確かな彼らだけの青春が。かけがえのない時間を過ごす中、彼等は友情と恋を超えた、いわば戦友のような絆で繋がっていく。

 

「生まれ変わったら、好きな人と結婚できる人生を送りたいなぁ」

 

そんな日々の中、徐々に湧いてくるのは希望。それは子供の絵空事、と言えるのかもしれない。だけど時にそんな力が現状を変え得る力となるのも確かである。いよいよ余命秒読みとなってきたほのかの願いをかなえるために奔走し。少しでも希望を、と必死に探す中で好位置と龍之介の二人で一つの可能性に辿り着いて。自分達の身体も実験台にした先に、希望が手繰り寄せた未来が幕を開ける。

 

希望が病魔を跳ね除けて、一年の先に四人でたどり着いたのは未知なる未来。だけど生き延びたのなら、其処に波乱は待っている。そして、もしかすると病魔はまだ息をひそめているのかもしれない。

 

余命という概念が、より日常を輝かせそこにある青春の瑞々しさを醸し出しているこの作品。レベルの高い青春を楽しみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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