読書感想:悪いコのススメ2

 

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読書感想:悪いコのススメ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で私立西豪高校という小さな絶望郷への反逆を始めた蓮と胡桃であるが、果たして一つずつテロを重ねた所で学校をぶっ壊す事なんて出来るのだろうか、と思われた読者様はおられるだろうか。世界への反逆、と言えば格好いいかもしれないが、実際の所は世界が相手であると個人の力では限界があると言えよう。なれば二人が求めるべきは何か。それは力、と言えるのかもしれない。新しい知見を持つ者、そして実際に権力を持っている者。新たに仲間を増やしていかぬといつか行き詰まるといっていいかもしれない。

 

 

ならば、どうすべきか。簡単な事で難しい事だ。新たな仲間を増やす、というのは。その辺りを描きつつ、この学校もまだ絶望に染まり切った訳ではないと言うのが分かるのが今巻なのである。

 

「別にいいけどな。あれですべてが変わるなんて思ってないし」

 

喉元過ぎれば熱さを忘れる、と言うべきか。教師陣には確かな傷跡を残すことに成功するも、やはりそう簡単に学校という世界は変わらなくて。あまり意味もないくせに夏休みを潰す夏期講習が始まり、蓮と胡桃はこの夏期講習を狙いに定め動き出す。

 

「―――君たちだよね? 学校に対して嫌がらせしてるの」

 

「ねえ、私も仲間に入れてよ」

 

 その二人で忍び寄る影が一つ。その名は奈々。二年生であり学年一位の順位を維持する秀才。彼女は仮説と執念で二人の犯行を掴むも、それを明かすことなく仲間に入れて欲しいと言い。一先ず彼女が起こそうとしているテロを見て見定める、という条件の元に結論は保留となる。

 

彼女の思惑は分からない、けれどやるべきことは一つ。夏休みの間だけ胡桃が一人暮らししている田舎の家で半ば同棲し、背徳を更に深め一線をあっさり超えたりしつつ。蓮と胡桃は夏期講習の闇を暴く形で、学校に揺さぶりをかけていく。

 

そんな中、奈々は何故か動きを見せず。見せた動きと言えば、新任教師である大隈への報告のみ。一体何がしたいのかと首をひねる中、蓮は奈々が抱える激情を垣間見。大隈の手帳を拾った事で、その心を知る事となる。

 

復讐するは我にあり、目には目を歯には歯を。二人のテロは、腐った大人達に突き付ける反逆の牙。だが大人達を一括りに見てはいけなかった。まだこの学校に染まり切っていないが故に純粋な大隈の心は傷つき。期せずして二人のテロは被害者を生んでしまっていたのである。

 

「なら、一緒に悪いことしましょうよ」

 

 その罪滅ぼしとして、奈々は大隈を引き込もうとしていた。だが胡桃はその先を往く。大隈の中、燻っていた子供のような反抗心を見抜き、彼女を死なせぬ為にも反逆に誘い。何かの糸が切れたかのように、大人の仮面を捨てて。大隈も仲間に引き入れることに成功したのである。

 

新たな頭脳と、大人の世界への内通者。更に味方を手に入れ、次に狙うのは生徒会。奈々にとって因縁のある、いつか復讐したい相手達。

 

より背徳に、より黒く。更にディープに踏み込んでいく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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