読書感想:メンヘラが愛妻エプロンに着替えたら2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:メンヘラが愛妻エプロンに着替えたら - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で晋助と静音は改めて「通い妻契約」を交わし共存と言う道へ向けて一歩踏み出したわけであるが、画面の前の読者の皆様、この先は甘いラブコメになっていく、と思われたのなら先に申しておこう、それは間違いであると。この作品は時に痛みに満ちている、それは今巻も変わらない。そう、共存へ進んでいくためにはまだ一つ、乗り越えなければいけない壁があるのだ。

 

 

それは静音の父親、愛彦の存在。そも、何故静音は地雷系となったのか、何故彼女自身の家に居つかないのか。その辺りまで明かされていくのが今巻であり、彼女の予想より十倍酷い家庭環境が明らかとなるのが今巻である。先に言ってしまおう、愛彦という存在はラノベにおける毒親の中でも五指に入るレベルで酷い。親の皮を被った人ではない何か、吐き気を齎す程の邪悪なのである。

 

「・・・・・・友達と写真を撮るのって、ちょっといいかも」

 

さて、それはともかく夏休みが来る。前巻の騒動から二週間ほど、静音も晋助の里帰りについていきたいけれどどうすればいいのか、と思い悩む中で千登世のアイデアを借りアリバイを作り。何とか親に説明し、詳細は告げぬままに晋助の故郷へ千登世も含め三人で向かう。

 

ついて早々、妹である結乃に警戒心丸出しで静音が噛みつかれるも何とか納得してもらい。結乃の誕生日を皆で祝ったり、皆でプールに行ったり、皆でプリクラなんかも撮ったりして。一時の優しい穏やかな時間を過ごす事となる。

 

だがほのぼのとした温かさ、静音も受け入れられた晋助の家庭の温かさを深堀するのならこの後にシリアスが来るのは明白であろう。荷物の確認と言うプライバシーも何もあったものではない愛彦の行動から晋助の存在がバレてしまい、襲来と言う展開を招く事となる。

 

彼にも、妻と死別した、という人間性の崩壊の切っ掛けは合ったかもしれない。しかし崩壊し芽生えたのは異常な執着。晋助への暴行から静音への暴力、監禁に至るまで通報すれば一発アウトな行動を平気で行い、自分の理屈をこれが正しいと言わんばかりに平気で押し付けてくる。それが何処まで正しくないとしても、その押し付けに子供は中々勝てない。

 

しかし、ひざを折るだけでいいのか? 否、良いわけがないだろう? 痛みをおして立ち上がり静音を迎えに行き、晋助は彼女と共に対決する事を決める。どのみち向かい合わずして開ける道はない、ならさっさと決着をつけるしかない。

 

「僕と、交換条件を交わしませんか?」

 

しかし根本的な部分を壊す、というのはやりすぎである。結果として求められるのはベストよりもベター、なればどうするか。子供なりの老獪心と知恵を以て、二人で思いをぶつけ立ち向かっていくのである。

 

前巻よりも痛みがある中、晋助の格好良さが救いとなる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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