読書感想:アオハルデビル3

 

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読書感想:アオハルデビル2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、青春は悪魔と共に、悪魔に彩られる彼等の青春。衣緒花についた悪魔を祓い、三雨についた悪魔を祓い。これまで二体の悪魔を祓ってきた有葉は、今度はロズィについた悪魔を祓う事になる訳であるが。前巻まで読まれた読者様、何かお忘れではないだろうか。

 

 

それは前巻の最後、佐伊により指摘された有葉の特異性。何故彼は悪魔に取り憑かれないのか? 察しのいい読者様であればもうお察しであろう。そこには何か秘密があると言う事を。その辺りにも触れていくのが今巻なのである。

 

「いってらっしゃい」

 

三年生となり環境が変わり始める中、衣緒花の家に通い妻のような状態で暮らす中。清水さんから舞い込んできたのは、モデル達の体調不良。それも互いに接触もなく、同じ現場に出ている訳でもないのに伝染している、というもの。衣緒花の事を気にかけようとした矢先、帰ってきた姉である夜見子。

 

「見ての通りよ。その子、悪魔に憑かれてる」

 

 彼女がロズィから引きずり出そうとしたのは悪魔の影、そこから姿を見せるのは犬のような影。そう、疫病の源となっているのはロズィだったのだ。そして夜見子の祓いのやり方は佐伊とは違い、最初からすべてなかったことにするというもの。その方法は「青春」ではなく、「大人」なやり方。その方法は有葉にとっては許容できるものではなく。彼女にお願いし、まずは有葉がロズィに憑いた悪魔の除霊に挑戦する事となる。

 

 

彼女が抱えている思いとは何か。それは父親の来日による、母親と帰国する、というもの。進路問題に揺れる有葉達とは違い、彼女には進路そのものがない。では何をすべきか。それこそやるべきことは一つ。親との対話、それしかない。

 

 

 それは成功し、悪魔は去った筈、だった。が、しかし。ここから状況は流転を始める。突如として状況が動き出し、有葉に対し衝撃の事実が告げられる。

 

それは有葉に何故、悪魔が取りつかないのか、という疑問への真実。そこに関わってくるのは、有葉の今までのあり方と、夜見子と有葉がかつて遭遇した事故。そこから導き出されるのは、残酷な現実。それを前に、衣緒花はその命を投げ出そうとし、夜見子もまた命を捧げようとする。

 

「姉さんが生きろと言うから生きるんじゃない。やらなくてはならないことがあるから生きるんだ」

 

それを許容する、そんな訳にはいかない。高らかに叫ぶのは、今こそ見つけた自分だけの青春、自分だけの願い。彼と言う器に願いと言う水が満ちる時。待ってましたと言わんばかりに悪魔は手を貸して。誰も犠牲にしない新しい青春が幕を開けるのである。

 

誰もが皆、青春に悩み。その先に己の青春を見つけ出し歩き出していく今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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