読書感想:お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件3

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前巻感想はこちら↓

読書感想:お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品も早くも三巻。季節は春、新学期である。春と言えば変化が目白押し、そんな新たな何かが始まる季節で在り、この作品においても例外なく、周と真昼の新たなる関係が始まる季節となる。

 

その変化とは進級、そして新学期。進級した事で、今まで別のクラスだった真昼と周は同じクラスとなり、家だけではなく学校においても徐々に距離は縮まり、関係性が少しずつ進み始めるきっかけとなる。

 

 その変化の口火を切るのは、我等がヒロインの真昼である。前巻で遂に周への恋を自覚した彼女は懸命に、周との距離を縮めようと行動を始めるのだ。

 

「私だけのけ者なのは・・・・・・いやです」

 

ふとした瞬間に、思わず自分の本心を漏らしたり。

 

「・・・・・・ゴールデンウィークに、周くんの一日をもらいます。お買い物とか、遊ぶのとか、したいです」

 

ゴールデンウィークが迫る中、周に貰った権利を行使し、周とのデートのようなお出かけの約束を取り付けたり。

 

 一生懸命に、少しずつ。周にだけ見せていた柔らかさを新しい級友達にも。周りの他人との距離感も少しずつ変化させようとしながらも、背伸びしながらも周に手を伸ばして。けれどその手を周は取らず、どこか遠慮するように彼女から一歩離れた位置にい続ける。

 

画面の前の読者の皆様にはこう言いたい方もおられるのではないだろうか。何故いかぬ、踏み出さぬ。君の気持ちは十分に知っているぞと。

 

 だが、それでも踏み出せぬのが我等がへたれ主人公の周である。そしてその踏み出せぬ要因の一つとして、彼が心の中に抱えた古傷が疼く。

 

地元で過ごした過去で抱えた苦い経験。信じていた人に手ひどく裏切られ、人と近い位置で関わるのが怖くなってしまった苦い記憶。

 

「・・・・・・でも、すごく、いい人なのも、我慢強いのも、知ってます。私にくらい、甘えてくれてもいいのですよ」

 

だけどそんな心の傷も、自分のダメな所も良い所も全部真昼は包み込んでくれた。自分の為に本気で怒ってくれる人がいた。その事実は確かに周の心の傷に差し込む光となり、彼の心の壁を解かす温もりとなる。

 

だからこそ、今、彼は決断の時を迎える。

 

「お付き合いはしていませんけど、私にとって・・・・・・彼は一番大切な人ですよ」

 

真昼によりクラスへと投げ込まれた爆弾、それは波乱の予感を芽吹かせて。もう進むしかない、退路はない。だから、今、その一歩を。

 

さぁ、いよいよ次巻では二人の関係性の変化がみられるのだろうか。

 

前巻まで楽しまれた読者様、どうか今巻も次巻も纏めて読んでみてほしい。

 

次巻、きっと望んだ景色が見られるはずだから。

 

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