読書感想:絶対無敵の解錠士

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は、「鍵」と聞かれて一体どんな要素を連想されるであろうか。幾つもの鍵を持つ、困っている子供達の前に現れる不思議な御婆さんだろうか。それとも、それぞれの記憶を賭けて戦う少女達が用いていた、横向きのカードの事であろうか。いずれにせよ、鍵と言うものは大切である。それが大切な要素となるのが、この作品なのである。

 

 

スキルやダンジョン、冒険者や魔物。王道的な要素で構成されたとある異世界、その片隅のダンジョンで。冒険者見習の少年、フォルト(表紙左)は死の危機に瀕していた。しかも、初めての冒険で、幼馴染であったミルフィの心をパーティーのリーダーである青年、レックスに奪われ何もかもを無くした状態で。

 

 しかし、死の淵でまるで導かれるかのように、運命が彼を選んだかのように。女神の如き女性の横顔が彫られた不思議な鍵を手に入れたフォルトは三種の神器とも言える神クラスの装備を手にする。

 

身体にかかる不幸な要素を全て癒すペンダント、あらゆる攻撃を無効化する盾、そして魔力を増幅させ魔法を喰らい成長する神剣。

 

「しかし少年・・・・・・これも何かの縁だと思わないか?」

 

更に彼へと訪れる、Sランクパーティ「霧の旅団」との出会い。リーダーであるリカルドに身の上を話し、義憤と共に同情され、新しい生き方を提案されたフォルトはその一員となる事を選び、リカルドの娘であるイルナ(表紙右)とコンビを組み、ダンジョンへと潜っていく事となる。

 

 初めて得た、幼馴染以外の信頼できる仲間。初めて得た、信頼と期待。本来いた場所では決して得られなかったであろうものを得て、フォルトは冒険者としての階段をイルナと共に駆けあがっていく。

 

ある時はイルナと即席のコンビネーションを炸裂させ、強敵を打ち倒したり。

 

またある時は、筋肉なスライムを倒して隠し部屋を見つけたり。

 

更にある時は、大人の邪な思惑に騙され謎の屋敷を探索する事になったり。

 

まるで運命が彼を選んだかのように、宝物が彼を求めるかのように。彼の元に様々なお宝は集い、彼を中心として彼を認める者達の輪が出来ていく。

 

その中で、フォルトが持つ不思議な鍵は様々なものを開けていく。宝箱から結界、更には心の扉に至るまで。

 

逆転と成り上がり、その面白さが丁寧に描かれ詰め込まれているこの作品。癖のなく、ストレスもなく、故にこそこの作品はとても面白い。だからこそ、この面白さはすんなりと心の中に入ってくるのかもしれない。

 

王道のなろう系ファンタジーが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

絶対無敵の解錠士 (角川スニーカー文庫) | 鈴木 竜一, UGUME |本 | 通販 | Amazon