読書感想:浮気していた彼女を振った後、学園一の美少女にお持ち帰りされました

 

 さて、最近は彼女に浮気されていた、という状況から始まるラブコメも少しずつ増えてきたと思う訳であるが、その浮気、というのは実は誤解であったという場合も多いし、誤解ではなかった、という場合も多い。しかしどちらの場合においても、メインヒロインとなる存在は浮気後に出会うものであり。その魅力というのは、浮気されたと言う下地の上に成り立っているのかもしれない。

 

 

ではこの作品のヒロイン、学園一の美少女である怜奈(表紙左)はどんな魅力を持っているのか、という事であるが。この怜奈という少女、中々に強かであると言えるのだろう。チャンスを逃がさず貪欲に、その上で繋ぎ止める為に近づくものを切り捨てるような強さがあるのである。

 

「私は彼にお持ち帰りされることにするわ」

 

初めての彼女、莉愛の急な変化に戸惑う少年、新世(表紙右)。優しさという強みと弱みが持ち味である彼はある日、親友である翔の妹であるそらと歩いている所で、莉愛が謎の男性と楽しげに歩いているという場面を目撃し傷ついたその心のままに別れのメッセージを送り。傷心の所を翔に誘われ半ば投げやりに合コンに誘われるも実はそれは出来レースであったと知り。居心地の悪さを感じ帰ろうとする中、追いついてきた怜奈は彼の唇を奪い。颯爽と彼にお持ち帰りされ、二人は一人暮らしである怜奈の家に行く事となる。

 

「・・・・・・じゃあもう、私にしなさい」

 

「残念だけれど、今は私が新世の彼女なのよ」

 

 まるで内面を見透かしたような彼女の言葉に吐露する、己が抱える後悔。それも丸ごと含めて好きだ、と怜奈は語って新世の事を受け止め。彼を家で留守番させ、学園で莉愛と向き合い激突する。冷たい声で彼女の言を全て切り捨て、許さないと言わんばかりに己が今いる状況を突き付ける。

 

彼女の見守るもと、新世と莉愛は改めて向き合い、莉愛は誤解であると言う真実を話し。だが隠し事をしなかった新世と違い隠し事をしていた、という事実が再びの信頼を呼ぶことは出来ず。改めて二人は別れる事となる。

 

だけど、何かが引っ掛かる。元恋人であるから分かる、彼女の性格からは考えきれぬ部分。何故? その蟠りを解消すべく莉愛の元を訪ね話を聞いた新世は、恐ろしい可能性に気付いてしまう。

 

「そんなの、わかりきったことじゃないですか?」

 

 それはこの事態を招いた黒幕はすぐ側に居た、という事。何故黒幕はそんな事をしでかしたのか。それは即ち「純愛」が故に。彼の事を一途に愛するが故に奪おうとし、その策を仕掛けた。その間隙を突き怜奈が掻っ攫っていったというのが真相だったのだ。

 

だけど、だとしても。もう間違いはしたくない。怜奈への思いは本物だから。本当の意味で莉愛との関係は終わり。怜奈と歩く道へと踏み出していく。

 

時に怖い、けれど真っ直ぐな純愛。それが確かにあるが故に甘さを持つこの作品。純愛を心に入れたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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