前巻感想はこちら↓
読書感想:経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。その7 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、累計八巻、作中時間にして足掛け四年以上。龍斗と月愛のプラトニックな関係性はそれほどまでに長く続いてきたわけであるが。画面の前の読者の皆様、そろそろいい加減に思われているのではないだろうか。もう君たちいい加減に次の段階へ進みなさいと。 最近のラブコメラノベの速さであれば四年もあればもう結婚くらいまで進んでてもおかしくないぞ、と。
そんなやきもきした気持ちを抱かれている読者の皆様、どうかご安心いただきたい。先に言ってしまうと今巻、やっとその瞬間は訪れる。しかもそれは彼等らしいシチュエーションの末に、という事を。
「・・・・・・『堕ろす』って選択肢がないんだよね」
前巻、決意の果てに用意した沖縄旅行という絶好のシチュエーション。しかしそこへ舞い込んできたのは、祐輔と付き合っている朱璃の妊娠疑惑という爆弾。 状況は既にそれが確かであると示しており、更によきせぬ妊娠というアクシデントで人生が壊れることになろうとも、子供を望む二人の答えを聞き、進んだ先にあるかもしれぬ妊娠という事を考えつつ。 また越えられず秋になる中、今度舞い込んできたのは横須賀に住んでいる月愛の姉、綺麗の失恋騒動。 駄目人間でも応援して甘やかしてしまう、そんなのめり込むような恋愛だからこそフラれたのがキツく衝動的に死のうとしてしまう姉を支える為、そっちの事情に関わることに。
月愛の願い、それは何も言わず姿を消した姉の元カノ、年下の自称シンガーソングライター、頼音を探す事。あっさりと厚木市で見つけ、話しを聞いてみればどうも、このままでは駄目だと思って一念発起、きちんと仕事を見付けて迎えに行きたいから離れたという本人には言ってないけど前向きな理由だったと知り。 夢に最後の決着をつける為、綺麗に愛を告げる為のラブソング作りを手伝う事に。
「担当する作家のことは、できれば好きになった方がいいよ」
それは将来的に編集者を目指す龍斗にとっては得難き経験。必要なのは好きになる事。愛し個性を見つめ、助ける事。頼音という個性を掘り下げ、作るべきは只一人に届ける曲であると結論付け。エピソードを語らせそれを纏め。下手なりに一生懸命に作った、只一人の為のラブソングは形を結ぶ。
「ずっと持ってたよ。リュートがいつ誘ってくれてもいいように」
一つの愛の結実を見つめ、自然と溢れ出した言葉。それは月愛も望んでいた言葉。故に彼等らしい場所で、やっと二人の関係は一歩進む。
「俺が望んでたことって、ほんとにこれだったのかな」
が、しかし。身近に迫るのは新たなお悩みの香り。龍斗に示された就職の選択肢。そして蓮と笑琉の関係性。残す思い、という難題が待っている。
一難去ってまた一難、将来を少しずつ見据えていく今巻。シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
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