読書感想:恋愛クソザコ女が、大好きなあの子のカラダで迫ってくる

 

 さて、日本の自治を運営しているのは政治という行いであるが、政治というものがどういうものか。それは我々一般の読者であればなかなか分からないものであろう。話に訊く事で想像することは出来る、けれど実際の所は体験してみないと分からないと言うなれど、体験する機会は基本的にはない、と言えるのかもしれない。しかし例えば生徒会選挙、のようなものは民主主義の一つでありここに関わるという事は、政治を僅かでも感じる事になるのではないだろうか。

 

 

「今の私は、この子本人―――少年が言う、うるはって子ではないの」

 

公務員の父を襲った政治の不条理に不貞腐れていたところで、ある出会いにより政治の世界を志し。幼稚園から大学までエスカレーター式が基本となる天堂院学園において、一般入試組でありながら最高峰の成績を維持し、長い付き合いの少女、うるはの参謀として生徒会選挙を戦う少年、弘樹。だが、うるはへ告白した途端、彼女から放たれたのは驚きの言葉。

 

 それはどういう事か。その答えは簡単。信じられぬけれど何故か、うるはの中身が入れ替わっていたのだ。しかもその相手は日本初の女性、更には最年少総理大臣、冬華。訳も分からず混乱する中、冬華が元居た国会も、想像以上にお馬鹿なうるはが原因で混乱してしまったのである。

 

とりあえず、状況を飲み込むしかなく。冬華にとっては想定外の事態、それでも腹心の部下に事情を話し。一先ずは入れ替わる中、弘樹も選挙のノウハウを教わる事を条件に冬華と協力関係を結ぶ事となる。

 

冬華が中身に入ったうるはは、今までとは見間違えるような聡明さを見せつつ、生徒会選挙に挑み。冬華の中身になったうるはは、今までの総理の偶像とはまた違う政策を押し出し、期せずしてその名を売り功績を積んでいく。

 

その最中、見えてくるのはこの学園の闇。持たざる者が虐げられる、あきらめを押し付けられる世界。

 

「俺は自分の目指す理想のために、不条理や理不尽に抗う能力を磨くって決めたんだ」

 

そんな世界を変えたい、諦めて最初から終わりたくない。冬華の隣、諸人を魅する彼女の演説を見届けてきた弘樹は新たな決意を固める。そこについているのは新たなる目標。冬華を超えるべき壁として、利用し合う相手として見据えたからこその若くて瑞々しい思い。

 

その思いのまま、守る為なら時に戦う。その男らしさに、真っ直ぐな魅力に。うるはの身体を通し、冬華は惹かれ始めていく。彼が惚れているのはうるはだと知っている、それでも諦めたくないと心が叫んでいくのである。

 

ちょっと不思議な状況と中々見ない題材から繰り出されるラブコメが、独特の面白さを持っているこの作品。あまり見たことのないラブコメを見てみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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