読書感想:双星の天剣使い2

 

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読書感想:双星の天剣使い1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、心踊る中華系ファンタジーとして始まったこの作品であるが、熱い展開とは裏腹に、隻影と白玲が属する国、「栄」は存亡の危機に立たされている、というのは前巻を読まれた読者様であればご存じであろう。敵となる大国、「玄」は優れた人材多数、対して「栄」は内部の腐敗に悩まされる人材すら限りある国。確かに隻影と白玲は二人で一人の英雄、の卵であるかもしれない。だが英雄とて何処までいっても個人。一つの戦場の戦局はひっくり返せても、全体を覆せるわけではない。

 

 

言うなれば焼け石に水、だがそれでも戦う為には各々の成長と共にさらに多くの人材を求めねばならぬ。特に、軍師のような頭の切れる者を。

 

「この戦は負けます。必敗です」

 

隻影のケガも癒えた頃、「栄」の国は愚かな行いを始める。華々しき戦果を求める愚者たる副宰相、林忠道が皇帝直属の中央軍、「禁軍」を駆り出し。更に義父である泰嵐の旧知の相手であり護国の要を担う二人の将軍、「虎牙」と「鳳翼」までもその軍と共に駆り出して。どう考えても戦力を減らす結果にしか終わらぬ、無謀な旧同盟国への遠征が幕を開ける。

 

どう考えても負け戦、だが命令である以上いくしかない。泰嵐を留守に残し、部隊を率い作戦に参加する隻影と白玲。物資の支援を担う明鈴とも合流する中、西冬で育った「仙狐」を名乗る少女、瑠璃(表紙左)と出会い。戦は嫌いなれど、優れた知恵と軍略を持つ彼女を仲間とし、戦列の最後尾から戦場へ向かう。

 

 明鈴と白玲がいつも通りにキャットファイトしたり、瑠璃が揶揄われたり。戦場の中で一時過ごす穏やかな時間。だがその時間は、長くは続かないのは明白。敵の皇帝、アダイの策により西冬の王都近くまでロクな抵抗もなく誘い込まれ。「玄」の「四狼」の一人「灰狼」を含む大軍勢の襲撃を受けてしまう。

 

味方を救うため駆ける隻影の前、立ち塞がるのは新たな実力者、「黒刃」のギセン。瑠璃の故郷を滅ぼした者であり、隻影とも互角以上に切り結べる実力者相手に痛み分けと終わり。彼等が遅れる間にも、主力軍は大軍に飲み込まれ、壊滅の危機に陥り瓦解していってしまう。

 

「貴方は私が守ります。背中、守ってくださいね」

 

若き芽を救う事には成功するも、二人の将軍は戦場に散り。再び一対の天剣が駆け、灰狼を瑠璃の策で討ち取る事には成功するも、状況は大敗に終わり死ぬべき者が生き延びてしまう。

 

そう、確かに次につながる希望は残し、短期的な成果は掴み取った。得たものは確かにある。だが失ったものはあまりにも大きく。強者たちは失われ、未熟な者と愚者のみが残される。戦えば戦うだけ敵の策に嵌り、徐々に追い込まれているのである。

 

更に絶望的なのは、何処までいっても後手にしか回れない事だろう。隻影達が立て直そうとする間にも、アダイは新たな策を練る。生き延びた者を用い、離間の策を仕掛けようとしている。彼女は語る、次こそが決戦であると。

 

多くの者が死ぬであろう中、国は残るのか。果たして隻影達の周りの者は全員生き残れるのか。

 

次巻、いよいよ一つの決着となるのかもしれない。

 

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