読書感想:第七魔王子ジルバギアスの魔王傾国記Ⅲ

 

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読書感想:第七魔王子ジルバギアスの魔王傾国記 II - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻まで読まれている読者様であれば既にお察しであるだろう。この作品の物語を動かす神がいるとしたら、割と悪戯好きというか、愛が歪んでいるという事を。魔王も魔族も全部殺し、魔王国を亡ぼす。そんな決意を固めているジルバギアスの道は、幾重にも屍と禁忌が積み重なるクソッたれな道程だ。幾度となく禁忌を犯し、されど彼は未だ、初陣すら未経験の小童。そんな彼に、どんどんと禁忌と言う重荷は背負わされるのだ。

 

 

そして今巻もそれは、変わらない。それどころか更なる重荷が背負わされる。それは「勇者殺し」。かつて人間だった自分にとって、希望の象徴であったはずの存在。それを殺さねばいけなくなる。

 

「―――奴らを蹂躙するのが、楽しみでなりませんよ」

 

汎人類同盟との初陣を前に、ジルバギアスが見繕わねばいけないものは何か。それは、真に背中を預けるに足る配下。そんな存在を探すために訪れたのは、レイジュ族の里。プラティの故郷でもあるそこで目撃するのは、「家畜」として「飼育」されている人間の姿。人間ではなく家畜として、尊厳の全てを奪われ。ただ数を増やすだけのものとして扱われる姿を見、必死に怒りを押し殺す。

 

だがしかし、この里においても面倒事はやってくる。レイジュ家の姫であり、初対面でジルバギアスに嫌悪感を抱いたルミアフィアが、初代魔王時代の族長の系譜の跡継ぎであるゲルマディオスを嗾けて来て、挑発に乗って軽く手合わせしたら角をへし折ってしまい。更には見せしめ目的でルミアフィアと戦う事ともなり。

 

といった一幕が有りながらも、配下になりそうな若者を見つけ出して。プラティの母親であるゴリラシアに地獄の訓練を受けながら、初陣へ向けての準備は整っていく。

 

―――その中で気付く、魔族としての自分が愛情に引っ張られている事を。人間としての自分の記憶がどんどん薄れている事を自覚する中、遂に試練の時が来る。奴隷の人族を民兵として組織し率いているのは、レオナルド。エメルギアスとの戦いに敗れ囚われた勇者。自身と奴隷たちの解放を賭けて、命の限りに襲い掛かってくるのであった。

 

本音を言うなら殺したくない、だけど生き残れねば死、あるのみ。ならば戦う、同胞殺しという禁忌を犯し、殺し尽くす。

 

「何もできなかったよ」

 

確かに力を得ることは出来た。だけど、何も、なに一つとして出来なかった。彼等の為に自分がしてあげたかったことは、何も。

 

得たのは虚しい勝利、しかし初陣の時は迫る。更なる禁忌を犯す時はすぐに来るのだ。

 

 

更に厳しさを増し、また一つ準備する今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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