読書感想:コミュ力向上のために言語スキルをマスターしたら、引く手あまたの英雄になりました

 

 さて、人と関わるうえで重要となるのは何であろうか。その答えは各人様々、明確な答えは無いのかもしれない。だが重要な要素として、コミュニケーション能力をあげられる読者様はどれだけ折られるであろうか。それもまた、当たり前と言えるかもしれない。生きていくうえで誰かと関わらなければならず、そうなればコミュニケーションというのは自然と発生するのだから。

 

 

では、コミュニケーションの上で大切となるのは何か。それ即ち、言語である。そして言語が違えば、コミュニケーションというのはままならぬものなのである。

 

魔物や貴族といった存在が普通にあるとある異世界、そこに存在するオルデア王国の由緒ある魔法使いの一族、グルーザー家。しかしかの家の長男として生まれた少年、ハーレイは何故か何の力もなく。下に才能豊かな双子の弟妹、マシューとロレインが生まれた事でいつしか出来損ないと蔑まれていた。

 

そんな中、王立の学園に通い始めるも根本的な問題は変わらず。とうとう見捨てられる事となり、唯一の味方であり王国最小の領地を治めるモイゼスの元に養子に出される事となってしまった。

 

「お前はもう一度話せるようになりたいか?」

 

 だがしかし、そこで運命のスキルとの出会いが待っていた。モイゼスの依頼で元スキル鑑定士である庭師、ガスパルが用意していた「言語スキル」。商人向けのスキルである筈のそのスキル、そこに込められた幾つもの効果をハーレイは使う事が出来たのである。

 

そして、言語スキルはただ喋れるようになるだけではなく、モンスターの言葉すらも理解でき、更には嘘すらも看破できるものであった。そのスキルで、まずは魔物に襲われていた騎士団長の娘、サーシャ(表紙中央)とその護衛であるエルシー(表紙右)を助ける事に成功し。お礼の為に騎士団長の家に招かれた先、出入りの商人の言葉に嘘を感じ、エルシーと共に調査に出向いた先で鉱山で行われている不正を看破し、また一つ功績を積み重ねる。

 

更には、セスと名乗るリザードマンとの出会いから、森の中に作られていた心優しいモンスターの村に招かれ。そこで育てられていた忌み子であるハーフエルフの少女、ソフィ(表紙左)と出会い。彼女と関わる中で、セスが今度結婚する王女に向けている思いを知り、その想いを伝える手助けをする為に奔走する。

 

それは全て、言語スキルがあったから。だが根底にあるのは、立ち直りつつあるハーレイの行動力。今まで抑圧されていた分、外へ外へと伸びていこうとする力。

 

「大丈夫ですよ。―――もう、これまでの俺じゃないですから」

 

そう、最早これまでの彼ではない。愛される場所を手に入れ、その愛の元で歩き出したから。だから、きっと大丈夫である。

 

王道のWEB系の流れを辿りつつも、一歩ずつ成長していく面白さがあるこの作品。王道的な作品を読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

コミュ力向上のために言語スキルをマスターしたら、引く手あまたの英雄になりました (ファンタジア文庫) | 鈴木 竜一, フェルネモ |本 | 通販 | Amazon